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映画「ルックバック」を観た! ※ネタバレ感想※

kaimi
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感想は、ぶらっくウッドが書いてます。よろしくお願いします。

ぶらっくうっど
ぶらっくうっど

ネタバレ感想なので、ご注意ください!

カイミ
カイミ

タランティーノ監督の映画「イングロリアス・バスターズ」のネタバレもあるのでご注意ください

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映画「ルックバック」こんな人にお薦め

  • 「藤本タツキ」が好きな人
  • 天才の仕事が見たい人
  • さわやか青春もの(絵描き・芸術系)が好きな人
  • 綺麗な絵のアニメーション映画が観たい人

ネタバレしますのでご注意ください

 短編ということもありますが、話の構成上絶対にオチに触れないと話が進まないので触れます。

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 買って読むべし。

 あと、何故か巻き添えを食ってタランティーノの「イングロリアス・バスターズ」もネタばれしますのであしからず。

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藤本タツキという存在

 藤本タツキという漫画家はかなり異色の存在です。

 代表作はアニメ化もされた「チェンソーマン」ということになるでしょう。

 作家としてはかなりの多作家で、実質デビュー作の「ファイアパンチ」の他にも多くの短編を著しており、それらは短編集にまとめられています。

 何しろ「漫画賞の賞金で生活費を稼いでいた」という才能の塊です。

 普通は「漫画家を目指して生活費を稼ぐためにバイトをする」もんでしょうに。

 衝撃の問題作「チェンソーマン」第一部が無事に完結した後、「第二部」が始まる前に「描き飛ばした」のが本作(ルックバック)です。

 雑誌掲載するわけでもないのにこの長さを一気に描き上げ、全編無料公開(当時)というんですから正に「才能の大安売り」というところです。

 正直「いやー世の中にはそういう種類の人間もいるのだなあ」という感想です。

 凄すぎて「羨ましい」という感想も湧いてきません。

 私が中途半端に絵が上手かったり、デビューはしたけど鳴かず飛ばずだったり、それこそ「食ってはいけるけど、マンガファンしか知らない知る人ぞ知る漫画家」だったりすれば「嫉妬」めいた感情が湧いてくるかもしれません。

 しかし「漫画賞の賞金で生活費を稼いでいた」相手に嫉妬などしませんよそりゃ。

 その「漫画賞」に将来を賭けて、生活と人生を賭けて必死に描いている漫画家志望者を尻目に「息を吸うように」漫画賞を獲得して生活費にしている存在です。

 昆虫のアリが人間のアントニオ猪木に対抗心燃やしますか?

 藤本タツキ先生は、間違いなく天才です。

 ただ、天才すぎるが故にか「鬼滅の刃」の吾峠呼世晴先生や、「進撃の巨人」の諌山創先生に比べると作品の話題性や知名度で若干劣るところもあります。

 また、日本漫画界に登場した漫画家の中でもその「才能の巨大さ」においては歴代でも下手するとナンバーワンかもしれません。

 にもかかわらず「ブラックジャック」や「ドラゴンボール」「ドラえもん」「ゴルゴ13」「こち亀」といった作品と並び立つ存在になりえていないのは何故でしょう。

 作風が人を選ぶんですよね。

 「鬼滅」「進撃」のどちらも「チェンソーマン」に負けないほど残虐シーンは入っているのに何が違うのでしょうか。

 よく言われるように「チェンソーマン」のデンジは、まぎれもない「週刊少年ジャンプ」の主人公でありながら明確な目的も持たず、欲望に忠実なままです。

 藤本タツキの漫画からは良くも悪くも「人間味を感じない」ところがあります。

カイミ
カイミ

藤本先生の漫画って、キャラを客観的にみてて、割とストーリー重視かな?「鬼滅」や「進撃」は感情移入しやすいキャラ重視のような。

 これは必ずしも悪いことではありません。庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」でキャラに人間味を感じますか?感じないけど抜群に面白いでしょ?

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 それこそスタンリー・クーブリックの様に「突き放して描く」作風で巨匠になったクリエイターなんて幾らでもいます。

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 そのあたりが何だかんだで浪花節に流れるところがある「鬼滅」や「巨人」などの国民的ヒット作との違いでしょう。

 「ファイアパンチ」も、設定はゾクゾクするほどシリアスで残酷なのに、段々途中から「ふざけ始め」ちゃうんですよ。

 映画好きなのはいいけど、一応は架空っぽい世界観で実在の映画名がずらずら並び、マンガみたいな(マンガだけど)「小娘」が無双をかまします。

 まるで「デッドプール」みたいに「どこまで本気で読めばいいのか?」読者が混乱して来てしまう、困った才能こそが「藤本タツキ」でした。

カイミ
カイミ

私は「ファイヤパンチ」大好きですよ!めちゃくちゃな感じが好き

ぶらっくうっど
ぶらっくうっど

むーー。 「ファイヤパンチ」の方なの!?

カイミ
カイミ

最後が面白いので読んでみてください!

「京都アニメーション放火事件」の衝撃

「京本」という意味深な名前

 そんな藤本タツキが真正面から青春漫画家ストーリーを描くというのですからそりゃ期待するでしょ。

 実際、WEB上の期間限定無料公開(後に紙及び電子で販売)であり、それなりのページ数があるため一気に読みました。

 面白かったです。

カイミ
カイミ

私もipadで一気読みした!!面白かった

 「京本」という意味深すぎる名前の登場人物(劇場で配られたネームでは別名でした)が、辿る運命は誰しもあるイメージをしたと思います。

「京都アニメーション放火事件」について

 それが「京都アニメーション放火事件」です。

 自分が勝手に送り付けた「アイデア」なるものを勝手にパクられた(模倣された)と思い込んだ妄想狂が「京都アニメーション第一スタジオ」にガソリンを撒いた上で放火し、実に36人を殺傷した事件です。

 この事件では実に様々な「不幸」が重なりました。

・アニメーターを主人公にした広瀬すず主演の朝ドラ「なつぞら」の放送中だったため、「新進気鋭のアニメ作家たちに話を聞く」という体裁で、その日に限って、よりによって「主要スタッフ」がスタジオに集められていた(ちなみに当のNHK職員は巻き込まれず)

・京都アニメーション第一スタジオは中央の螺旋階段が吹き抜け構造になっており、これが「煙突」の役割を果たし、猛烈に炎が燃え広がった

・バカな犯人は「放火テスト」の1回も行わず「ガソリンなら燃えるだろう」と適当にガソリンを購入(最初は軽油か灯油の予定だった)。

・非常に気化しやすい上にあの1~2トンもある車を軽快に走らせるガソリンの燃焼力はすさまじく、「ちょっとボヤ騒ぎにして困らせる」予定が、大半を殺しつくす大惨事となる。

 放火犯である犯人も炎にまかれ、通常であればまず死は免れないほどの大やけどを負う。ただこいつは全身を包丁などの刃物で武装しており、煙に巻かれて入り口に逃げてきた京都アニメーション職員を「迎え撃つ」つもりだったので「殺意」はありすぎるほどあった

 少し「ルックバック」の本筋とは外れますが、この事件こそが恐らくは「ルックバック」の「最大の執筆動機」なのでもう少しお付き合い頂きます。

 「熱烈なアニメファンが現実に放送されたアニメを自分のアイデアを模倣された」と思い込む事件は実は「京アニ事件」の前からかなりありました。

 私もアニメスタジオに勤務していたことがありますので(撮影部門及び制作部門)、多少の内情は知っています。

 私が勤務していたのは「ガンダム」でお馴染み「日本サンライズ」から歩いて行ける距離にある撮影・演出スタジオでした。

 その当時(1990年後半)にアニメ業界で言われていたことは、

「素人が分厚い封書で送ってきた『企画書』『シナリオ』」なるものは、

絶対に開封せずに、そのまま送り返す

のが鉄則でした。

 一度でも封を開けた場合、「パクられた!」と思い込んだ相手が大問題を引き起こすためです。

 私が体験したことで、とあるアニメのヒロインが常に同じ服を着ているため、「このお金で彼女に新しい服を買ってあげてほしい」という手紙の「現物」を見せてもらったこと・・・があります。

さながら根本敬の「電波系」です。

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 他にも「熱心なアニメファン」によって多くの「事件」が引き起こされてきた歴史があります。

 原作の完結を待たずにテレビアニメ放送を終了してしまった「うる星やつら」(81年版)においてはプロデューサーの自宅にいやがらせなどが殺到したりと大変な騒動になりました。

 また、現在では逆にタブーとなって話題にされることも少ない「宮崎勤事件」などもあり、90年代初頭などは「オタク」のイメージは「単なる気持ち悪い集団」どころか「性犯罪者・凶悪犯予備軍」とすらみなされていました。

 「オタク=犯罪者」という構図が正しいとは全く言いませんが、そう誤解されかねない土壌があったことは否定してはいけません。

 アニメファンなら知らぬものの無い「京都アニメーション」はその高い品質で知られますが、元々「仕上げ専門の下請けスタジオ」として立ち上がったこともあり、ヒット作の大半が「原作もの」でした。

 オリジナルの独自IPを持たなかったんですね。

 いくつかオリジナル作品を発表はするものの、「涼宮ハルヒの憂鬱」「CLANNADO」などの原作ありの大ヒット作には及びもつきません。

 自前で大ヒットのオリジナルIPを持つことは京都アニメーションの悲願でした。

 そのため、「優れたアニメの原作」を求めて「京アニ大賞」というライトノベルの賞を立ち上げます。これはアニメスタジオ主導のものとしては非常に珍しい試みといえます。

 ただ、いまさら言っても詮無いことながら、これは「大悪手」だったと言わざるを得ません。

 勝手に送り付けてくるものですらトラブルの種であるのに、「入選作・選外」以外にも「落選作」も含めた大量の「パクられ元」を広く募集するとなれば、「箸にも棒にも掛からぬ」駄作を送り付けた妄想狂が「パクられた!」と凶行に及ぶ可能性もある…というか「そのまんま」な事件が起こってしまったのです。

 それこそ「入選」「準入選」「佳作」といったカテゴリに入る作品の作者は見識のある常識人でしょうが、まともな文章の形にすらなっていない「予選落ち」作品群の中に「電波系」が大量に紛れていることは一般の方にはわからなくてもアニメ関係者なら容易に推測がついたはずです。

 余りにも衝撃的な事件であるため、様々な憶測を呼び、それがあるトラブルに発展します。

犯人は精神異常者?

 先にこの話を片付けておきましょう。

 京都アニメーション放火事件は当然ながら様々なマスコミも報じます。その中の該当インタビューで印象的なものがありました。

 とある遺族らしい男性がこう言い放ちました(大意)。

「これまで真面目に一生懸命生きてきたのに、なんであんなわけわからん奴に殺されなあかんねん」(場所が京都なので方言)

この

「わけわからん奴」

がある種のキーワードでした。

 犯行動機も完全な思い込みであり、客観的に見ればあり得ない上に仮にパクられたことが本当にだったとしても放火などという行為は常軌を逸しているために、多くの人は犯人を

『精神がおかしくなった人』

だと思おうとしました。そうでなければやり切れなかったためです。

 これには幾つか問題があります。

1 仮に本当に「精神耗弱あるいは精神喪失」だとした場合、犯人の責任を追及しても罰則がなくなる

2 実際は「心神喪失状態ではなかった」という前提のもと裁判が進められている。つまり、客観的事実として犯人は精神異常者ではない

 「精神異常者でもない」ということになると、「ではどうして被害者はこんな目に遭わなくてはならなかったのか?」という問いに「論理的な回答」が与えられなくなってしまいます

 これがこの事件で一番モヤモヤするところです。

 まさに「ルックバック」というコミックは、ここにエグいくらいに切り込んだ作品です。

 「なら、どうすれば良かったのか?」に全く答えが出ません。

 であるからこそ藤野は「私が漫画の道に誘ったから京本は死んだんだ」と無茶苦茶な「論理的結論」で自分を責めてしまいます。

 「そんなわけがない!」と多くの読者や観客は絶叫したでしょうが、どんな形であれ「何かに責任を押し付けないと気が済まない」ほどに追い詰められていたということでしょう。

 ちなみに「わけわからん奴」というインタビューは大抵は少なくともに三日は繰り返して同じ映像素材を使いまわすTVにあってこの一回しか見た記憶がありません。

 おそらく「なんらかの団体」からの抗議に対策したのでしょう。

タツキ先生なりの「京アニ事件」

 漫画の「初版」においては、犯人が何らかの精神疾患を持っていると思われるセリフ等があります。

 これは「事実」と反します。

 そのため「修正」が行われたのですが、これが「過剰に犯人の人権に配慮しているのではないか?」として問題になりました。

 「自分の中で京アニ事件に決着をつけたい」のが執筆動機だとするならば「論理的に何らかの構図」を与えることが必要だったのだと思います。

 「真相を知りたい」というのは人間にかなりの行動原理になりえるみたいです。

 とある殺人事件の裁判で遺族が「あなたは死刑にならなくてもいいから、どうしてウチの父を殺したのか理由を教えてほしい」と懇願した例があるそうです。

 今も続く裁判での被告の支離滅裂な言動によって、少なくとも「動機」は明らかになりました。

 36人も殺している以上極刑は免れないので一応の制裁は下ったことになりますが、無念なのは失われた人命は決して戻らないということです。

「ルックバック(漫画版)」初見の感想

 もちろん面白かったですよ。

 よく言われるのが「藤本タツキ風『まんが道』」という評でした。

 女の子でしかもコンビに置き換えられているものの、あの超天才藤本タツキにも人間らしいところはあって、年齢が上でも下でも悔しくはないけど、同年代で自分より絵の上手い人間がいることが許せない!という「情熱」が描かれていることでした。

 また「オタクっぽい」という誹謗中傷を受けつつも、真っ当に真正面から正攻法に「絵の練習」をしていた主人公のひたむきな姿が延々と描写されます。

 きっと藤本タツキ本人もそういう「絵にひたむきな」時代を送っていたのでしょう。

カイミ
カイミ

映画のパンフに「絵にひたむきな」ことが書かれてました!

 タイトルの「ルックバック」は「振り返る」という意味もありますが、「背中を見る(見ろ)」という意味もあります。

 それくらい、延々と主人公の「背中」が映っているのが印象的な漫画(映画)です。

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 ただ、界隈から湧き上がる「藤本タツキの余りの才能に筆を折りたくなった」とか「感動して涙が止まらない」といった感想はあまり持ちませんでした。

 「本質はそこじゃない」と思っていたからだと思います。

 むしろ、「あの不条理そのものの『京アニ事件』に自分なりに救いを見出したかった」思いに自分の少年時代を重ねたものだと思いました。

 ラストも「結局、京本は助かったのかそうじゃないのか?」がかなりの程度ぼやかされており、いつものメタフィクションで突き放した藤本作品らしさも抑制気味ではあるものの、全体的にシュールな味わいも消え切れておらず「ヘンな雰囲気の漫画だな」と思いました。

 もちろん藤本漫画で恐らく一番ウェットな展開への感動はあった上でです。

 WEB上の感想がほぼ「感動」一色だった当時にこんなことを言えば総バッシングだったでしょう。

 が、その後に発表された「さよなら絵梨」はいつもの作風に戻っており、ラストの「爆発オチ」のシュールな結末と、中盤にも爆発があるという構成上の混乱から、

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「ルックバックみたいな感動短編で泣こう」

と待ち構えていた読者たちを…なんだこれ?…と混沌のどん底にたたき落とすことになります(爆)。

「ルックバック」はクリエイターたちに刺さるのか?

 誰もが分かっていることですが、口に出して言わないのことは、

「藤本タツキがあれほどの大ヒット漫画家になれた」理由が

「ひたむきに努力した」

からではなく

「才能があったから」

に他ならないことです。

 才能があった上であれだけの努力をしたから成功したのであって、才能がない人間が何万枚絵の練習をしようと大ヒット漫画家になんかなれません。

 多くの「漫画家を目指していたけど諦めた」ひとは「あり得たかもしれない栄光」をこの漫画(映画)に見て涙するみたいですが、その「漫画家を諦めた」道は決して間違ってはいないと言い切れます。

 それこそ人には向き不向きがあり、仮に絵は下手なままでも「歴史に残る大ヒット」をすることなんて幾らでもあります。

 「鬼滅の刃」の吾峠呼世晴先生なんて、背景の「建物」を描くのにフリーハンドだったので編集者が見かねて「定規を使ってください」と注意したというエピソードがあります。

 絵に関しては「このレベル」でもお話が面白ければ大ヒットするのです。

 大ヒットどころか「歴史に残る」「社会的事件」レベルの超特大ヒットです。

 「進撃の巨人」の諌山創先生に至っては、漫画を描くにあたって、どうしても自分の漫画を最初から何度も読み直す必要が生じるのですが、

「こんなヘタクソな漫画を面白いと思える読者が凄い」

と自分で言っちゃってます。

 つまり「大ヒット漫画」に至っては「絵の巧拙」すら問題ではないのです。

 上手いに越したことはありませんが、決して「決定的要因」ではありません。

 では「大ヒット漫画に必要なもの」は何なのか?といえば「それは誰にも分らない」としか言いようがありません。

 何かにひたむきに頑張る人を描く物語は感動を生みやすいのは事実です。ましてやそれが「サブカルチャー」である「漫画」ということになれば、一見すると近い境遇に見えます。

 そしてそこに登場したのが「幻のリベンジもの」でした。

クエンティン・タランティーノ監督と「幻のリベンジもの」※ネタバレ注意

 異端の映画監督にクエンティン・タランティーノがいます。

 元はビデオ屋の店員で、仕事の合間にも映画を見まくっていた映画オタク少年は、

「レザボア・ドッグス」

「パルプ・フィクション」

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などで鮮烈なデビューを飾ります。この「巨匠」に世界中の「映画小僧」があこがれまくり、「コピーバンド」ならぬ、「コピー監督作」よろしく模倣作風で映画を撮りまくりました。

 「レザボア・ドッグス」で登場人物が全員黒スーツなのは「葬式帰りの喪服姿」なんですが、理由は当然一番安く揃えられるからです。またタラ作品お馴染みのダラダラした会話など「お金のかからない」要素だらけなのに抜群に面白いことから「お金が無くても面白い映画は撮れる!」と思われたのも、追随作が多い要因でしょう。

 莫大な予算を掛けたハリウッド大作がオーケストラやオペラであるとすれば、これら低予算作品は貧相なガレージバンドといったところですが、面白さでは全く引けは取らないどころかその熱すぎる勢いで上回ることすらあります。

 そのタランティーノがある時期から始めたのが「幻のリベンジ」ものです。

 トム・クルーズの映画に「ワルキューレ」という映画があります。

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 まあ、毎度おなじみ「ヒトラー暗殺もの」です。

 現代を代表する映画スターが、映画界では最大の悪役である「ヒトラー」に立ち向かうというのですからそりゃもう正義と悪の構図がはっきりしていていい!

 …と思うでしょ?ところが、「史実」が下敷きってことになると困ったことが起こります。

 それは「絶対にヒトラーを倒すことが出来ない」ということです。

 史実においてはヒトラーはソ連侵攻の際の地下壕で自殺することになっているので、どれほど原作が良くできていようが、トム・クルーズは決して映画の中ではヒトラーを倒すことはできないのです。

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 ところが…ネタばれしちゃいますが、タラは映画「イングロリアス・バスターズ」のラストにおいてなんと

ヒトラーを倒しちゃうのです!!

 映画館に観に行っていた私たち家族はぽかーんとなってしまいました。

 冷静に考えれば「映画」なんですからそれくらいの無茶はしてよかったはずなのです。

 ユダヤ人の友人も多いタランティーノは彼らの話を聞くうちに、「せめて映画の中でだけでもリベンジさせてあげたい」と考える様になったというんですね。

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とか、シャロン・テート惨殺事件を扱った「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」などもありました。

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 ただ、個人的にはこの手の「幻のリベンジもの」は余り関心しません。

 それならば日本人が1945年の広島上空に戦闘機を繰り出して原爆投下を阻止する映画作っていいんでしょうか?

 歴史の苦い経験を安易な感動ものにするのは一種の「自己満足ポルノ」でしょう。

 しかもタランティーノはユダヤ人でも黒人でもありません。それを「やってあげている」スタンスには正直かなり疑問がありました。偽善とまではいいませんが、微妙な感情を抱かざるを得ないんですよね。

 それこそ「正義感の押し付け」というか。

 それこそ源氏が勢いを失い、平家全盛の時代に「世紀のモテ男」である「光源氏」を大活躍させる小説を書かせて、せめて霊に留飲を下げさせる…というのならば多少は分かります。

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 ただ、どれだけフィクションの中でリベンジして気持ちよくなっても加害者の罪は消えないし、何より犠牲者が生き返るわけでもありません。

 そのため、「幻のリベンジもの」(著者が勝手に命名)はタラ以外はあまり手掛ける人がいません。

 はい、もうお分かりですね。

 藤本タツキは「ルックバック」の中で、いざ京本に襲い掛かろうとする「犯人」を漫画的に飛び込んで来た藤野が蹴り飛ばし、見事に助ける「あり得たかもしれない世界戦」をやってみていたんですね。

カイミ
カイミ

私もそう思った。主人公の藤野=藤本タツキ先生で、相棒が京本=京都アニメーションかなと。先生が過去へ戻り、京アニを襲う人を飛び蹴りして未然に防げてたら・・・と考えたのかなー と。

 アニメ「チェンソーマン」に数々の映画パロディがあることは有名ですが、「ファイアパンチ」でつらつらと並べ立てられた様に、藤本タツキが熱烈な映画ファンであることは疑いようがありません。

 当然、タランティーノ作品なんて全部抑えているでしょうし、「幻のリベンジもの」の存在も知っていたでしょう。

 それを「京アニ事件」でやれたら…それが漫画「ルックバック」だったんじゃないでしょうか?

 当然タランティーノよりも「慎み」を知っていた我が国のアーティストである藤本タツキは結局は「あり得たかもしれない世界戦を垣間見る」にとどめ、現実で踏みとどまって漫画家を続ける描写に落ち着きます。

 ほんのわずかな期間にこれを描き終えるという、その速度は全盛期の手塚治虫先生を思わせます。

 ただ、「結構面白い佳作」くらいの位置がふさわしい評価で(つまらないと言っているわけではありません)、余りにも過剰にこれを褒めるのは違う気がします。

 「余りの衝撃に藤本タツキには一生追いつけないことが分かったから筆を折りたくなった」といった感想は、「漫画家を取り扱っていた」からという側面が大きいでしょう。

 あるいは「この漫画の素晴らしさが分かる自分」にある種陶酔している光景が浮かんできます。

 無論、人が純粋に感動しているものをくさす気など毛頭ありません。

 ただ、素晴らしいのは事実ではありますがあらゆる漫画家が「ルックバックみたいな作品」を目ざす必要なんてありません。

 それぞれの持ち味で頑張ればいいのです。

 純粋に漫画として、アニメ映画として面白かったし、楽しませていただきました。

まとめ

とにかく絵がきれい!!アニメの技術の進化を感じた

 とにかく絵がきれいで、58分と短いながら「アニメの楽しさ」を存分に味わうことが出来ます。

  藤本タツキに人間味がないみたいなことを言いましたが、ライバルに絵を認めてもらった小学校の卒業の日に、「喜びの余りヘンな踊りをする場面」などは、原作のハイライトですが見事にアニメに落とし込まれていました。

カイミ
カイミ

私も、あの変な踊りと喜び方、好き 笑

 一応業界人だったこともあるんで分かりますが、かつてはまず不可能か、「売り物になる数十秒」しか実現できなかった「主観視点」で絵がグリグリと動き回るのがもう当たり前になっているので、アニメを見るのが久しぶりなんて人にもその技術の進化を存分に味わえるのでおススメです。

 口コミで異例の大ヒットをしている模様で、いよいよ新作のブルーレイなどが発売されず、配信のみの時代になろうとしている今、自分が加入しているサブスクサービスで見られるとは限らないので、今劇場で見るのがおススメです。

ぶらっくうっど
ぶらっくうっど

読んでいただき、ありがとうございました!今、劇場で観るのをおすすめします!!

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お絵描き好き
漫画好き夫婦の感想ブログ「遊星からのブログX」です。お絵描き好きの妻(カイミ)と、オタク第二世代&こじらせオタクな夫(BW・ぶらっくうっど)、猫2匹と暮らしています。語りたくなる漫画・映画等のおすすめ作品と、iPad、PC便利グッズなどをご紹介していきます。
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