Dr.コトー診療所・山田貴敏先生の漫画「いただきます!」平成なりあがり物語 感想(BW)
・・・私にとって「いただきます!」は「どうしてこんなに面白いのにメジャーになってないのだろう?」と疑問に思っている作品で、もっともっと読まれると嬉しいな、と思って記事にまとめました。記事はぶらっくうっどが書いてます。よろしくお願いいたします!
個人的に山田貴敏先生といえば「いただきます!」の先生なんです。
作品概要・あらすじ
山田貴敏先生の名前の読み方
「やまだ たかとし」先生です。
作品概要
小学館の週刊少年サンデーで連載。コミックス第1巻は、1993年8月15日に初版が発行されている。全11巻。のちに表紙の違う完全版が出版された。
少年詐欺師の成り上がりを描いたピカレスクロマン(悪党が主人公で、悪事を通して世の不正を描くものが多い)で、ジャンルはコン・ゲーム(標的とする人物を信用させて働く詐欺)もの。
あらすじ
主人公ゴダイは、希代の少年詐欺師。
天涯孤独の身だったが、大財閥の「菱王家」の三男として迎えられて「菱王ゴダイ」となる。だがそれは、腹違いの兄と姉がゴダイをはめるために仕組んだ罠。彼を一時的に社長にして会社を計画倒産させ、後釜に兄が入るというものだった。
ゴダイは優しい四男(腹違いの弟)と共に濡れ衣を着せられてしまう。会社倒産の責任を取らされ散々な目にあうゴダイ。だが彼はこのまま終わる男ではなかった。
彼は詐欺師としての頭脳を生かし、菱王家への反撃を開始!!
漫画「いただきます!」感想
もっと多くの人に読まれて欲しい、面白い作品
私はこれまで何作か「マイナー」扱いを受けても仕方がない作品をレビューしてきました。
特に未だに新旧記事とも読まれている「EDEN」
などは「自分が書かなくては、埋もれてしまう!もっと皆に読んで欲しい!」というある種の「使命感」めいたものがありました。
これらの作品はまごうこと無き「力作」であり、語るべき点は多々はあるものの、流石に世間的に大ヒットしているメジャー作に比べれば、俗な言い方をするなら「ツッコミどころ」は多かったのは間違いありません。
漫画「いただきます!」は欠点らしい欠点が全くない
どうしてメジャーになってないんだろう
しかし、世の中には「欠点らしい欠点が全くない」…と言う風に少なくとも私には読める…のに、お世辞にもヒットしているとはいえず、またメジャーでもない作品も存在します。
私にとって「いただきます!」はそういう作品でした。
作者の山田貴敏先生の代表作といえば、何年にも渡ってドラマ化され、映画化された「ドクターコトー診療所」が有名です。
というか世間的には「ドクターコトーの人」という印象すらあるみたいです。
まあ、確かに「ドクターコトー」はいい話ですし、面白いです。
私はあるものを持ち上げるのにあるものをけなす方法は取りません。
ただ、「ドクターコトー」をそんなにみんな評価するのならば、
同じ作者で面白さは…方向性は違うものの…
全く引けを取らない
大傑作「いただきます!」も是非読んでいただきたい!
と声を大にして主張したい!
映画3~4本分のトンデモない面白さがぎっしり!
たった全11巻に、映画3~4本分のトンデモない面白さがみちみちに詰まっているのです!
ストーリーの解説と言っても、既にいった通り。
余りにも完成度が高いため、私ごときが「こんな風に面白い」だの「実はこれは〇〇を下敷きにしていて…」とかの「解説」だのを入れる余地がありません。
だって『よしながふみ先生の「大奥」はこんなに面白い』とかの解説なんて今更いらないでしょ?
けれども何とか頑張ってやってみたいと思います。
「スカッとする痛快な物語が読みたい人」にオススメ!!!
スカッとするまでの「我慢して作品を見る(読む)時間が短い」のも良くて、例えば「半沢直樹」ではなく、「必殺仕事人」や「遠山の金さん」みたいな感じ・・・わかりますか?
「半沢直樹」も面白いけれど、我慢して、我慢して、我慢して・・・最後にスカッとする!・・・ですよね。
対して、「必殺仕事人」や「遠山の金さん」は、すぐ悪者は退治されます。我慢して見る時間が少ない。案外、解決するのが早いのは、イントロ無しの音楽が流行る令和の時代にあってるのでは?と思うのです。
漫画「いただきます!」は、主人公の少年詐欺師ゴダイが、ヤクザや大人達を手玉に取ってその場を頭脳のみで切り抜けるので、スカッとします。
ゴダイは腹違いの兄に騙されるも、逆に詐欺を仕掛け、復讐していくのですが、その大きな詐欺を仕掛ける途中過程でも幾重にも詐欺を仕掛けます。なかなか痛快な展開です。
大財閥の「菱王家」に詐欺を仕掛けるので、最初からスケールが大きい!
痛快なコン・ゲーム(標的とする人物を信用させて働く詐欺)が読みたい人におすすめします。
漫画「いただきます!」主人公ゴダイの「悪の魅力」
「エンタメ作品における悪の魅力」という記事で書いたように、人は「悪いものに憧れます」。
エンタメ作品の中で彼ら(悪人・詐欺師など)は、我々が普段ぐっと我慢してしまうようなことを、いとも簡単にやってのけ、痛快な思いをさせてくれます。
漫画「いただきます!」主人公の「菱王ゴダイ」は最初はケチなチンピラとして登場します。
コトー先生が純粋で善意の塊みたいな人であるのに対し、
ゴダイは
「オレ、今まで人ダマして、悪いと思ったことなんか一度もないもんね。人間ダマすかダマされるか、ダマされりゃ負けさ」
「いただきます!」コミックス1巻より
・・・と「罪悪感もないし、騙される方が悪い」という、「悪事の痛快さ」という点で、「額に入れて飾っておきたいほど」の名言をモットーとしています。
天涯孤独同然だった彼が日本を代表する企業グループ「菱王」の子であるとされて引き取られたことで全ての物語の幕が開きます。
全体で幾つかの章に分かれています。特に名前が付いているわけではないので私が勝手に呼びますが、「リゾート詐欺編」「映画編」「ゲーム編」「自動車開発編」「農業ビジネス編」そしてラストの「飛行機産業編」となるでしょう。
非常に細かい「知識」「情報」が当たり前の様に出て来るのがポイントです。
「勘違い作戦」「チリツモ」などといった企業相手の詐欺方法なんて私は普通に生きていて全く知りませんでした。
とにかく、読者すら完全に騙す「作戦」で、舐め腐った敵を完全に撃退し続けるその快進撃ぶりたるや本当にたまりません。
連載時にはコマ切れにしか読めていなかったのですが、全巻を入手してからは数年おきに読み返すほどはまっています。
ぶっちゃけ、日本の予算では無理でしょうから、「海外ドラマ」の原作として買われても全くおかしくありません。
これだけ内容が詰まっていて抜群に面白いのに恐ろしくテンポがいいのも特徴で、私などは「大長編」だと思っていたラストの「飛行機産業編」なんて単行本で2冊分しかないのです。
何度読み返しても信じられないのですが、本当にそうなんです。
「成り上がっていく物語」が読みたい人におすすめ!
サブタイトルに「平成なりあがり物語(ストーリー)」とある通り、実は純然たる詐欺は「リゾート開発編」と「映画編」で製作費をかき集めるくだりくらいで、その他は「実業家」としてなり上がっていく物語だという事も出来ます。
という事はつまり、「事業」もまたやりかたによっては「詐欺すれすれ」場合によっては「詐欺そのもの」という側面を強く持つということでもあります。
疑似的に「お金持ち」気分が味わえるのもいいところ。
「自動車編」では、「最も売れる車」を作るための研究と称して「目につく売れてそうな車を全部種類一台ずつ買ってくる」という暴挙をかまします。
この時点でそれくらいは出来る程度にお金持ちになってるんですね。
多くの読者はイーロン・マスクが「〇兆円でツイッターを買った」とか言われても「へー」としか思えないでしょうが、そのレベルではないにしても、「大所高所に立った行動」を疑似体験できます。
こういう体験が出来るのはほかに「島耕作」シリーズくらいじゃ?
少なくとも「ハッタリのかましかた」などはきっと一流企業のトップはこれくらいの神経のずぶとさがあるんだろうなあと思わせます。
詐欺師の成り上がりものなのに、読後感が爽やかなのはなぜ?
詐欺師から始まり、世界を相手に渡り合う成り上がり実業家の野心マンガでありながら、こうも読後感がさわやかなのは、全編が「職人に対する尊敬」にあふれているからでしょう。
読んでいて、映画監督、エンジニアや職人さんなど「作り手」を尊敬しているのが伝わってきます。
この漫画は詐欺師の話なのですが、何しろ目標がいちいちデカすぎます。なので様々な「作り手」を巻き込みます。
「ゲームを作る」「映画を作る」ってことであれば、まあある程度何とかなるかも?レベルなんですが、「車を作る」なんてムチャクチャ…なんですが、NHKの朝ドラの様に決して自力開発しようとしたりせず、既存のナンバー2、3、4の自動車メーカーを巻き込んでナンバー1を倒そうとするのです。
この雄大さはまるで豊富な資金力による買収で強引に事業を成功させる世界的企業トップの発想です。
最後は自動車工場の現場で働くエンジニアと信頼関係を作り、一人一人を奮起させ、誇りに訴えて見事に成功させていくのですから面白いに決まっているのです。
完璧な面白さだけど、もしも欠点があるとしたら?
唯一欠点らしい欠点を探すとしたら「いただきます!」という内容が全く想起出来ないタイトルくらいでしょう。
私、BWさんの持ってる漫画「いただきます!」の表紙を見て、最初グルメ漫画だと誤解してたもの。
流石にこれはあんまりだと思ったのか「平成なりあがり物語(ストーリー)」と謎の文言が単行本左上に小さく載っていますが、仮にこれがタイトルだったとしてもちょっと…ですね。
何かいいアイデアはないでしょうか。
まとめ
完成度が高いこの作品を、とにかく読んで!!
余り書き込めなくて申し訳ないんですけど、とにかく完成度が高いです。
唯一「ちょっと強引かな」と思ったのが「農業編」くらいで、それでも世界のアグリ(農業)ビジネス相手に丁々発止するゴダイの発想力と行動力に舌を巻くことが出来ます。
ハリウッドに目を付けられる前に是非ともこの世界を体験しておきましょう!
Amazonプライムやネットフリックスで80年代の近過去コン・ゲームものとしてつくられないかしら。
誰か制作会社関係の方、この作品を見つけて!!
漫画「いただきます!」はどこで読めるか
(2023年5月調べ)
紙の本
・紙の本は中古で手に入ります。
電子書籍
・楽天kobo、Amazonなどで読むことができます。
・Amazonの「Kindle Unlimited」の定期購読者は、無料で読めます。
Kindle Unlimitedで読めるの、良いですね。
・極!合本シリーズ(1−4巻)(コミックス11巻完結相当)などの電子書籍で読むことができます。
WEB漫画
まんが王国では、1巻無料で読めます。
コミックシーモアはポイント購入して読めます。
スキマでは2023年5月現在、「いただきます! 完全版」が全話無料で読めます(アプリの方のスキマだと、コイン購入)。
読んだ人のレビューは全員・星5つ中、4ー5と高評価。
面白いので、あっという間に読んでしまいますよ。