漫画「アクシデンツ 事故調クジラの事件簿」感想(BW)
漫画「アクシデンツ」はこんな人におすすめ!
- 「ドクターコトー診療所」「いただきます!」などの山田貴敏先生のファン!
- ミステリ好きな人!
- 熱い漫画が読みたい人!
あらすじ・概要など
概 要
山田貴敏先生の漫画「アクシデンツ」は「週刊少年サンデー」で1996年5・6合併号から1998年41号で連載された。単行本は第1巻が1996年7月15日に初版が発行され、全12巻完結。2012年に文庫版が出版された。
あらすじ
主人公・鯨樹雄(くじらぎゆう)、普段はおもちゃ修理屋を営む普通のおじさん。
だが真の姿は「あらゆる事故を令状なしに捜査」できる内閣官房特命調査官!!
謎だらけの事件の原因を解明し悲劇を繰り返さないために、持ち前の行動力と推理力、そして熱い信念で徹底的に事件解決に挑む!
この漫画の来歴と、当時の時代背景
「新世紀エヴァンゲリオン」放映後の時代
個人的に一押しの傑作コミック「いただきます!」の次の作品となります。
1996年5・6合併号から1998年41号。
ちなみにかの「新世紀エヴァンゲリオン」が1995年10月~1996年3月で、私はこれを基点にサブカルを見るところがあります。
一応「エヴァンゲリオン後」の作品ではあります。
という事はつまり、「地下鉄サリン事件」の翌年であり、同時に「阪神大震災」の翌年の作品でもあります。
Wikipediaにも登場人物の簡単な紹介とコミックのコードが書いてあるくらいのそっけないページしか存在しませんが、マイ・フェイバリットの「いただきます!」にはWikipediaの単独ページすら存在しないのでまだ恵まれている方です。
2023年現在は無いのですが、今から単独ページができたら嬉しいですねー。
コミックにて12巻。ということは2年強連載されていたことになりますから、決して人気が無かった訳ではありません。
しかし、地味な題材ということもあって決して恵まれた作品とは言えません。
現在に連載されていたならば、数々のスペクタクル場面もCG描画できますし、あっという間にドラマ化とかなったでしょう。
少年誌でなく、大人向けの雑誌だと、もっと続いてたかも。
ネットが日本に普及しきっていない「世紀末」の「暗い時代背景」
暗い時代背景
先ほど書いたのですが、連載前年の1995年は単に「地下鉄サリン事件」「阪神大震災」があった年という訳ではありません。
時代は「世紀末」。
「ノストラダムスの大予言」が信じられていて、ほんの数年後には世界が終わってしまうかもしれない…という妄想をギリギリ信じられる時期でした。
油断するとテレビではそんな話題ばかり。
女子高生による「援助交際」が話題になり始めた時期であり、確かに平和ではあるものの未来にこれといった展望が見えるわけでもなく「終わらない日常」とまるで平和で平凡な日々が悪い事であるかのような言説がまかり通っていました。
分かりやすく言うと、今よりずっと「暗い世相」だったんです。
この時期のテレビに関する状況などは余り記録されていないのですが、「オウム真理教スペシャル」みたいな「特番」がゴールデンタイムの2時間で放送され続けていました。
民放は5局(実質4局)、あるので「どこかの局で」毎日やってたのです。
私の様なニュースウォッチャーは大歓喜ですが、普通の視聴者にとってみれば気が滅入る毎日だったと思います。
ネット普及していない当時のこと。
まだインターネットの無い時期。日本で一般家庭に普及し始めたのは2000年以降位、1996位は、パソコンは高価で当時は20万越え!
※当時の飲食店バイト時給は九州が600円くらい、東京は800円くらいだったような(最低賃金はもっと低い)。
1997-8年位?の学生の頃、セガサターンでネットしてみようとしたものの、電話回線でおそーいし、わけわからんかった思い出が。
ドリームキャストでしてみたけどコンテンツ少なかったなぁ・・・。「モーニング娘。」検索しても1つ位しかヒットしない。
「暗い時代背景」だったから「渋い内容」の漫画が描かれた?
こういった「暗い時代背景」だったから、「世紀末の暗い世相」になる以前の漫画「いただきます!」のような詐欺師の漫画とは別の作品が書かれたのではないかと。
「事故調査して真相を突き止める」という渋い内容のコミックは、当時の時代背景があったからこそ生み出された話なのではないかと思います。
漫画「アクシデンツ」の見どころ!
- 事故調査官の話がおもしろい!
- アクション巨編!
- 良質なエンターテインメント!
見どころ1:事故調査官の話がおもしろい!
基本的には事故現場に訪れては「事故原因」を徹底的に調査し、「真相」を突き止めるお話です。
それだけだと非常に地味なお話なんですが、そこはコミックの名手山田先生なので、ちゃんと面白くなっているんですね。
まず、「事故」が起こったということは犠牲者がいるということになります。
怪我人くらいならいいんですが、この物語の第一話では旅客機の墜落で100人の死者が出るという大規模災害です。
そして「容疑者」が浮かびます。
本人の責任ではないのに「容疑者」扱いされて困っている人の冤罪疑惑を晴らすために頑張るお話なんですね。
常に的外れな推理と言う名前の決めつけで冤罪を連発する警察関係者。
ちょっとうさんくさいレベルでクセの強い「事故調」ライバル…などなど。
見どころ2:アクション巨編!
私の大好きな海外ドラマに「CSI:マイアミ」があります。
基本的には「鑑識」が主役のドラマです。
アメリカの「お仕事」ドラマってのは本当に色々あるもんだなあと言う感じですが、中でもこの「マイアミ」はぶっ飛んでいて、「鑑識」が主役だっつってんのに犯人を尋問するわカーチェイスはするわ銃撃戦まで(!!)。
この「アクシデンツ」もそんな感じ。
基本的には「全てが終わった後」に書類と地味な調査で真相ににじり寄っていく展開なのですが、半分近くは「リアルタイム」で進行するお話です。
これがまあ規模がデカい事!分かりやすく言えば「タワーリング・インフェルノ」「ポセイドン・アドベンチャー」「タイタニック」が5~6回でやってくる感じです。
「そんなこと出来るの!?」と思うかもしれません。
確かにこんなの実写でやろうとしたら予算がいくらあっても足りません。
ただ、これは「マンガ」ですから、これだけの大スペクタクルが出来るんですね~。
最終12巻の巻末のコメントによると、少年誌に掲載するには題材が地味だったため、強引に派手な展開にしたとのこと。
見どころ3:良質なエンターテインメント!
何しろ12巻も続いていますから間違いなく人気作です。
そしてエンターテインメントの職人、山田先生の作品ですから憎らしいほど押さえるべきポイントを押さえていて手に汗握るハラハラする展開が読者を待ち構えています。
とはいえ、まあ若干安易に流れた面があるのは否定できません。
「劇場映画レベル」の展開も連載数回分で綺麗に収束することが何度も続くと、勝手なもので読者も慣れてきてしまいます。
あの出るたびに胃が痛くなるレベルでイライラさせてくれたライバルたちも割と早々に「改心」してしまって、「最終回」では全員が力を合わせて主人公のクジラを助けるために集結してくれるのでした。
しかし!この面白さは折り紙付き!「いただきます!」の様に「他の何を押しのけてでも読んでください!」とまでは推せませんが、もしも目の前にあるのなら迷わず読んで欲しいです。
面白さは保証します!
最終12巻の、おまけの読み切りについて
最終12巻で突如「地震は予知できる!~4000人を救ったギリシアのVAN法~」という実話を元にした読み切りが始まります。
ここだけの話、「最終エピソード」が若干不完全燃焼だったところに持ってきて余韻にひたるまでもなくノンフィクションのお話が始まるので正直戸惑います。
ただ、読んでみると「理解されない主人公」「悪意を持って決めつける既得権益の権力側」などなど、「ドクターコトー診療所」などに見る「山田イズム」が凝縮された様な一遍で、「なるほど」と思えます。
「アクシデンツ」連載終了、その後・・・
その後も何作か継続して作品を発表された山田先生は遂に2000年に「ドクターコトー診療所」の連載を開始されるわけですね。
もちろん、「ドクターコトー診療所」の医療についても徹底的に調べて描かれていると思うのですが、メインとなるのは治療・手術そのものでなく、患者との交流…という感じ。
「いただきます!」「アクシデンツ」の様に膨大な知識・情報量に裏打ちされた良質なエンターテインメントではなく、「人情噺」の方が普遍性があったってことかあ…なんて思ったり思わなかったり。
山田先生の病気療養によって「ドクターコトー診療所」の連載が長期に中断している今こそ「アクシデンツ」を実写ドラマ化でもして応援しませんか?
今こそ「アクシデンツ」を実写ドラマ化して応援しませんか?・・・なんて思ったりしました。
内容的に海外ドラマの予算くらいかかりそうに見えますが、2023年現在ならCGもあるし、見てみたい♪
お試し読みできるサイト※2023年8月調べ。
少年サンデー名作ミュージアム ・・・ 少年サンデーの公式サイトで、1話がお試しで読めます。当時のままの、巻頭カラー原稿が見れます!
続きが気になって一気読み。気になったらぜひ!