スティーブジョブズとスティーブウォズニアックの若かりし頃を描いた漫画「スティーブズ」感想(BW)
記事はぶらっくうっどが書いてます。よろしくお願いします。
漫画「スティーブズ」はこんな人におすすめ
- うめ先生「東京トイボックス」「大東京トイボックス」が好きだった人
- コンピュータの歴史に興味がある人
- アップルコンピュータ及びスティーブ・ジョブズが好き、興味関心がある人
- じわじわと興奮・感動したい人
紙の単行本は、こんな感じ
ちょっと話がそれますが、この単行本の表紙の加工がちょっと面白くて、中央に透明で立体的な印刷を施しているようです。青リンゴにも加工がしてあるので、光の加減で青リンゴもキラリと光る!(2巻の表紙は、2人のジョブズと熟した赤リンゴになってるのもポイント)
裏表紙にも透明のロゴを印刷してるのが、Appleぽい!?
白、黒と交互に表紙のベース色が変わって戸棚に6巻飾ると白黒ボーダーになって良い感じ。
巨星堕つ
2011年10月5日、享年56歳でスティーブ・ジョブズが亡くなりました。
少し前から健康問題に対する噂は駆け巡っていましたが、残念ながら現実のものとなってしまいました。
普通は〇者を悪く言うことにはためらいがあるため、「とてもいい人だった」とか「偉大な人物だった」といった美辞麗句が駆け巡るものです。
その昔、新聞記事で女性の〇体が発見された際には、現実と全く関係なく必ず「美人〇体見つかる」と報道されるものだったそうです。
ところが、かのスティーブ・ジョブズの評判はコンピュータ業界の紛れもない最大の人物であるにも関わらず、亡くなった直後から毀誉褒貶(きよほうへん)が激しいものでした。
分かりやすく言えば、亡くなった直後だというのに「こんなにヒドイ人だった」みたいなニュースがそれなりに流れたのです。
よく言えばそれくらい個性的、悪く言えば嫌われ者だったということです。
亡くなった後に出た、伝記や映画のこと
スティーブ・ジョブズが亡くなった後、お馴染みの表紙の「スティーブ・ジョブズ」 (ウォルター・アイザックソン著)をはじめ、数え切れないほどの伝記が出版されました。
中でも「映画」は、なんと2本も公開されました。
タイトルまで全く同じなのが凄いですね。
スティーブ・ジョブズ (2013年の映画)(2013年、アメリカ映画。ジョブズ役:アシュトン・カッチャー)
スティーブ・ジョブズ (2015年の映画)(2015年、アメリカ映画。ジョブズ役:マイケル・ファスベンダー)
ちなみにこの2本はタイトルは同じで、どちらも同じ人物を題材にした伝記映画なのですが、アプローチは全く違います。細かく触れているとそれだけで1項目になってしまうのでここでは触れません。
そして「日本の漫画」でも描かれた
そして、日本語のコミックもあるんですねえ。
それが
「スティーブ・ジョブズ」(ヤマザキマリ著、上記の書籍の漫画化)
「スティーブズ」(原作:松永肇一、漫画:うめ。複数の著作を元にジョブズとウォズニアックを主役に描く)
の2本です。
奇しくもどちらも6巻完結と比較的コンパクト。同じ人物を題材としているので同じ人物が同じ出来事を体験している訳ですが、実に好対照なコミックとなっています。
ちょっとだけ、若い時の個人的Apple体験
私は90年代に映像系の専門学校に通ったものですから、アップルの伝説的コマーシャル「1984年」を繰り返し見せられたものです。
そして発売されたばかりのマッキントッシュで数々の映像ソフトのデモをどや顔で見せつけられました。
もう感動なんてもんじゃなかったんですが、今にして思えば凄かったのはマッキントッシュであって、先生やましてや学校では無かった気が…。
iMacが発売された時にも貧乏学生にもかかわらず、購入まであと一歩のところまで行きました。
結局、発売されたばかりの「ドリームキャスト」でインターネットジャンキーへの道を開くことになります。
その後、 父のお下がりのポンコツWindowsパソコンを駆ってよちよち歩きのコンピュータ人生を歩み始めるわけですが、「マック(アップル)は特別」という意識がありました。
「普通の仕事をする人はWindows、映像・芸術系アーティストはマック(アップル)」
と言う感じですね。だからちょっと割高という…。
何しろ「アップルストア」の「店員」をエバンジェリスト(伝道師)と呼ぶ会社です。
それほど詳しくもない私にも、アップルのヒッピーな雰囲気は濃厚に感じ取れたものです。
そして、パソコンのシェアでは常に2~3割でしかなかったアップルがiPod、iPhone、そしてiPadを発売しました。
iPhoneすらスルーしたのですが「電子書籍が読める」(実際には漫画とYoutubeばかりでしたが)ということで、iPadに飛びつきました。
貧乏サラリーマンが頑張って月賦で勝った最初期モデルは、開いた瞬間には電源が入った状態で迎えてくれました。マニュアルすら入っていないその梱包への「こだわり」はド素人にも濃厚に感じられるものでした。
ただ、やっぱりアップルファン独特の選民意識というか、「俺たちこそが流行の最先端」な雰囲気はちょっと苦手でした。
直感的に使えて、色々と便利だからApple製品を使っているのですが、確かに若い時は・・・同じデザイン学科の友人らのAppleフィーバーにはちょっと乗り切れない時があったなぁと思い出しました。
夫婦漫画家:うめ先生の「東京トイボックス」について
きっかけは覚えていませんが、後に実写ドラマ化も成し遂げるゲーム業界漫画「東京トイボックス」が好きでした。
コンビ漫画家は珍しくありませんが、「夫婦」というのはちょっと珍しい「うめ(小沢 高広・妹尾 朝子)」さんの端正な絵柄で描き出す「ゲーム業界もの」はありきたりな表現で恐縮ですが、「アツい」漫画でした。
特に続編となる「大東京トイボックス」の終盤の盛り上がりたるや大変なものだったんですよ!
「電子書籍化」にも熱心なデジタルディバイドも高いこのクリエイターがあの「スティーブ・ジョブズ」を料理するとなればこれは買わずにはいられません。
スティーブ・ジョブズを描いた漫画を、読む順番
それぞれに魅力があるのですが、伝記「スティーブ・ジョブズ」 (ウォルター・アイザックソン著)を未読であるならば、
「スティーブズ(全6巻)」(原作:松永肇一、漫画:うめ)
↓
「スティーブ・ジョブズ(全6巻)」(ヤマザキマリ著)
の順がいいと思います。
理由は簡単で、「スティーブズ」は初代マッキントッシュ発売直後、自ら作ったはずのアップルから追放される時点で終わっているからです。
「スティーブ・ジョブズ」は伝記を漫画化したものですから、当然その後もしっかり描き、最後の瞬間まで漫画化しています。
ヤマザキマリ版「スティーブ・ジョブズ」について
ぶっちゃけ、私がこの手の記事を書くきっかけである「面白いのでみんな読んで!」の題材として、うめ先生の「スティーブス」を紹介するだけの予定でした。
もう一種出版されていて、「テルマエ・ロマエ」のヤマザキマリ先生によって漫画化されていることは知っていて、通っていたマッサージ店に置いてあったものを軽く序盤だけ流し読みした程度でした。
どういう訳か、紙の単行本5・6巻が大変なプレミアがついています。とはいえ電子書籍では定価で購入できます。
意図的に画面の情報量を抑えた淡々とした語り口。困った顔のおじさんが乱舞する作風は「テルマエ・ロマエ」でお馴染みの構図です。
どうやら熱烈なアップル信者にとっては「あのエピソードが無い」とか「ここの部分はもっと分厚く描け」とかあるみたいなんですが、問題なく面白いです。
何しろ当のクイーンのメンバーが監修した公認映画「ボヘミアン・ラプソディー」にすら、あれこれ注文を付ける「ファン」は大勢いるので余り気にしなくてもいいでしょう。
何しろ「あのiMacはこうして生まれた」とか「iPodは…」「iPhoneは…」と言う具合で、それほど詳しくない私でも興奮しきりでした。
ただ…問題がゼロではありません。
漫画「スティーブ・ジョブズ」と「スティーブズ」の違い
「スティーブ・ジョブズ(漫画:ヤマザキマリ)」を読んでいると、まるでアップルとちょっとだけマイクロソフトがこの世のあらゆるコンピュータのハードもソフトも開発しているみたいに感じてしまいますが、実際には当然そんなことはないわけです。
何しろ「画面に直接触れて操作する」というスマートフォン独特の「マルチタッチ、ピンチ、スワイプ」といった技術及び特許すらアップルが開発したものではありません。
iPhone発売にあたって、持っていた会社ごと買収することで実現させました。
かのGUIですらいまだに「パクリ」疑惑濃厚です。
私の先輩たちは「WindowsはMacのパクリ」だと言っていた訳ですが、そのアップルだって元ネタからパクってるわけです。
開発やクリエイティブなものって、模倣から始まってオリジナルとなっていくところはあるけれど・・・。
オタクの間では有名な、ウォズのことを描いてくれて嬉しかった!
「スティーブズ(漫画:うめ)」はその名の通り、二人のスティーブをそもそも主役に据えています。
スティーブ・ジョブズは皆さんご存じでしょうが、私たちオタクの間ではウォズことスティーブ・ウォズ二アックも同じくらい有名でした。
https://alu.jp/series/スティーブズ/crop/2JEdSwpqHigrJuU8aV5Kにもかかわらず、「スティーブ・ジョブズ(漫画:ヤマザキマリ)」ではウォズも「大勢いる人物の内の一人」といった扱いです。
この時点でこの二作の「目指すところ」が全く違うのが分かります。
「スティーブズ(漫画:うめ)」が最初のアップル時代でぶっつり終わっているのも読み比べてみるとよくわかります。
一番エキサイティングなのが勃興期ですから。
正にその「一番アツい時期」を劇的に描こうとしたのが「スティーブズ」なのです。
確かにiPhoneは革命的でしたが、既にiMacどころかiPodも存在している世界です。
「個人向けコンピュータ」などというものが影も形も無かった時代に、マニアたちがいじくりまわしていた「基盤とキーボード」の塊がどんどん進化していく時代の興奮とは比べ物になりません。
タイトルこそ「スティーブズ」で実際ジョブズは主役ではありますが、実態は「パーソナルコンピュータ勃興期の歴史」といった趣です。
ジョブズの「現実歪曲フィールド」をドラマチックに表現!
「漫画」として「面白い」のは圧倒的に、うめ先生の「スティーブズ」です。
全く同じ出来事を描くのに「ここまでドラマチックになるのか!」とひっくり返りそうになります。
ヤマザキマリ版「スティーブ・ジョブズ」は伝記のコミカライズ
「スティーブ・ジョブズ」に登場するジョブズは、パブリックイメージ通りの小汚いヒッピーあがりで傍若無人な暴君です。
若いころには傲慢な態度で人と接することが苦手なため、他のバイトメンバーと喧嘩しないように一人だけ誰にも会わない深夜勤務にしてもらっていた(そんなこと出来るの?すごいなアメリカ)というくらい。
それでいて情緒不安定で、どんな時にも冷静な(というかそれが普通)のビル・ゲイツなどと違って、場合によっては人前でも号泣して暴れます。
正直、自分でプログラムを書いたりもせず、デザインの図面を引いたりするわけでもない「何もしていない」この人物が歴史的偉業を次々成し遂げたというのはにわかには信じられなくはあります。
…ただ、確かに「破天荒な人物」には違いありませんが、「まあ、こういう人もいるよな」のレベルは越えません。
そりゃ実際に描かれた「伝記」を「原作」としている訳ですから、そんなに無茶は出来ないのは承知の上ですが、いかにもな「伝記漫画」いや「伝記を原作としたコミカライズ」です。
うめ版「スティーブズ」は伝記や他の資料を踏襲しつつも、脚色した「漫画のキャラクター」にしている
そこに来ると「スティーブズ」に登場するジョブスを始めとする登場人物の全員は完全に「漫画のキャラ」として立ちまくっています。
キャラ付のため謎の方言を操るなんてのは序の口で、セリフもいちいちドラマチックでしびれます。
ジョブズがまだアップルを設立する遥かに前、二人っきりで基盤を弄り回している時にインテルから無料でDRAMを調達してきたエピソードはその道ではかなり有名なんだとか。
「スティーブ・ジョブズ」では、一コマでこう表現されるのみ。
「ジョブズはあちらこちらに電話して」
「インテルから何個かのDRAMを手に入れた」
(漫画:ヤマザキマリ「スティーブ・ジョブズ」2巻75ページ)
…これだけです。
「スティーブズ」だと序盤の非常に大きなエピソードになっています。
インテルに乗り込んだジョブズは、そのみすぼらしい格好を馬鹿にされ、揶揄されながらもこう言い放ちます。
(担当者に対して)貴様は小物かもしれんが…
小物には小物の、役割ってものがある。
よく考えろ。
お前のクソみたいな人生の中で、そんなチャンスは一度きりだ。
DRAMを持ってこい。
オレたちの革命にちょっとした貢献をさせてやる。
(漫画:うめ「スティーブズ」1巻20-23ページ)
・・・タダで高価なパーツを貰いに来てるのに、何という態度でしょうか(爆。
しかし、歴史を変える起業家ってのはこのくらいの根性がなくてはやっていられないのかもしれません。
しかも、この時のナレーションのハッタリがまた最高なんですよ!
この時のことを彼はこう回想している。
この小汚い男の言葉がまるで神の啓示のように聞こえた…と。
(漫画:うめ「スティーブズ」1巻24ページ)
何ですかこれは!
歴史家が同じ場面を未来から振り返って語るなんぞ、まるで「銀河英雄伝説」ですよ!(「グラップラー刃牙」でもいいけど)。
必殺技?「現実歪曲フィールド」を「漫画的演出」でみせている
どうやらジョブズは余りにも壮大なハッタリをぶちかましたり、無理難題をスタッフに押し付けながらも強引に実現してしまう「不思議な力」があったとしか思えない…みたいなんですね。
それをTVドラマ「スタートレック」から引用された「現実歪曲フィールド」と呼んだとか。
それを「漫画的演出」で絵にしているんです。
これが数ページおきに出て来るんですから、こんな漫画、
「クソ面白いに決まってる!」(ジョブス的表現)んですよ!
個性豊かな「登場人物」たち
「登場人物」と言ったって、ほぼ全員が現実に存在する「実在の人物」ばかりです。
なんですが、強烈過ぎる個性で恐ろしいほど「キャラ立ち」しています。
何しろ勝手にオネエ言葉にしてみたり、日本の方言でナマらせたりとやりたい放題です。多くの方がご存命なので、恐らく勝手にやってるんでしょうね(汗。
そして、「重要人物」ともなれば、「初登場時」の演出的ハッタリなんて「コテコテ」で「やりすぎ」ですよ。・・・いいぞもっとやれ。
「(前略)何モンや?」
「ウィリアム…。」
「ウィリアム・ヘンリー・ゲイツIII世。」
「ビル・ゲイツって呼んでいいよ。」
(漫画:うめ「スティーブズ」1巻202ページ)
げええー!このガキ(当時)があのビル・ゲイツかよ!と読者がひっくり返る…と言う訳です。
淡々と事実を並べていく「スティーブ・ジョブズ」ではこういう「面白そうなこと」はしない訳です。一方で「スティーブズ」ではこの過剰演出…面白そうでしょ?
しかもこのコマ、1巻の最後なんですよ。
トンデモない大物ライバル登場!2巻に続く!…ってわけ。本当に「伝記」かこれ!?
…クソ最高じゃないですか!
こんなに面白い「漫画」がマイナー扱いだなんて許せない!絶対にみんな読んでください!
現在に繋がる数々の技術
恥ずかしながら、私はかのビル・ゲイツが(今現在使われている形の)「BASIC」を作ったという事を知りませんでした。
「MS-DOS」は知っていましたが、それが「Microsoft disk operating system(マイクロソフト・ディスク・オペレーティング・システム)」ということだったことすら知りませんでした。
そんな古い時代から活躍しとったんやマイクロソフト!すげーな(超いまさら)!
目の前で読んでいる漫画が、今の現在に繋がることが次々に出てきて、大げさに言えば「創世記」を読む様な気持ちでした。
「ああ、あれってあのことだったのか!」というね。
初期アップルIIのヒットソフトに「ウィザードリィ」の名前を見つけた時の感動たるや…(GUIの登場前だからみんなコマンドでプレイしてたのか…)。
とある研究所に所属していた人が後にwordを作り、とある発明が現在の「LAN」になり、とある人物が「レーザープリンタ」を作り、レーザープリンタ用ページ記述言語を作った人が、後にグラフィックツールを作り、その会社が後に「Adobe」になった…と全てがこの調子。
どんどん「今の世界」が出来上がっていく過程を見ている様です。
ある場面、何やら悪だくみ(?)しているっぽいビル・ゲイツ青年が窓際に腰かけてこう語ります。
いくつものウィンドウを同時に開くことができるようなOS。
それを、世界中のマシンに乗せる。
名前は、そうだな。
Windows
(漫画:うめ「スティーブズ」6巻59ページ)
恐らく実際にはこんな劇的な命名場面があったわけではないでしょうが、それにしても初めて読んだ時には本当に「ゾクっ」としました。
読めば読むほど、え!そうなの!?の連続。私はそこまでパーソナルコンピュータの歴史に詳しい訳ではないので、このくらいしか分からないんですけど、昔から詳しい人はもう狂喜乱舞なんじゃないでしょうか。
例えばこのメッセージにピンとくる方います?その由来も描かれています。
MacPoint by Bill Atkinson
豊富なコラムがトンデモなく面白い!
とにかくパーソナルコンピュータ黎明期は余りにも情報量が多すぎるため、「漫画に出来ない」部分については、相当の文字量の「コラム」でそれを補完しています。
かなーり砕けた調子で話しかけるみたいに語っているコラムの情報量はムチャクチャ大量です。
しょっちゅう入ってくる文字だらけのページにここを飛ばして読んじゃう人もいるのかもしれませんが、私に言わせればこここそが真骨頂です。
割とよくあるのが、さっきまで漫画の中で活躍していた人物の「顔写真」が掲載されている場面。
本物出しても平気というのは凄い自信だなあ…と私なんかビビッてしまいそうです。
結構歴史的に有名な写真などもありますし、余り写真を撮らなかったのかそれしか残ってなかったのか、トンデモないコスプレで写っている人物まで。
単にこの調子だけでは「右から左」でしょうけど、ついさっきまでその人物についての漫画読んでたわけなので脳に刷り込まれるようですねえ。
とにかくコラムがトンデモなく面白い!
象徴的場面「『マッキントッシュ』プロジェクト」はヤマザキマリ版の方がわかりやすい
とはいっても、流石にうめ版の漫画表現では理解が難しいところもあります。
例えば、かの有名な「マッキントッシュ」プロジェクトは元々ジョブスのものではなく、社内でひっそりと続けられていたものを居場所がなくなったジョブスが「横取り」して完成させ、あのドヤ顔でのプレゼンをやることに繋がるわけです。
最初に読んだ時、「横取りも何も、社長なんだしアップル内のどんなプロジェクトだろうと元からジョブスの物なのでは?」と思ったのですが、冷静に考えればそんなわけはないんですよね。
「スティーブ・ジョブズ」では長年担当者を務めてきたジェフ・ラスキンと口論し、物別れに終わった後に解雇したんだなと分かる形になっているのですが、これが「スティーブズ」になるとこうなります。
- マッキントッシュ開発部門はまるで魔法使いの隠れ家
- ジェフ・ラスキンはまるで魔法使い
- 「説得」場面の象徴として、「言葉」魔法で全身を緊縛されている「魔法の戦い」みたいなことになる
- 説得を諦めたラスキンが行方不明となる
…まるで夢の中みたいに描写されています。
まあ、こういうのも「実はこういう意味なんだよ」とコラムでフォローしてあります。
ジョブズの娘の話も「スティーブズ」はちょっとわかりにくい表現
面白い漫画なのですが、もう一つ漫画表現としてわかりにくい所は、娘の描き方。
紛れもなく自分の娘なのに全く認知しようとしなかったシーンとか分かりにくかったなあ…。
夢の中のような幻想みたいに描いてて、現実に娘がいるのかも??
実在にいる娘さんなのですけれどね。
小さな経営から官僚主義に変わっていく暗黒面を描く
流石に資本主義のお膝元だけあって、何かあると猛烈な大金が動きます。
ものの数人がガレージで始めた会社も法人化し、規模が大きくなり、「おれ、お前」で住んでいた家庭的な雰囲気は「社長の顔を見たこともない」引き抜いた新入社員が官僚主義を導入し始めます。
果ては高学歴の移籍組が、低学歴のヒッピーの集まりでしかなかった「オリジナルメンバー」たちを「低学歴の無能ども」と見下し始めます。
まあ、いいとこの大学を出た「一流社員」が、「設立当時、近所に住んでたから手伝ってた」様な人が要職についてそれなりにいい給料もらうのは納得しがたいのかもしれませんが…。
これは洋の東西を問わないみたいですね。
「勉強ができる、テストで高得点」なのと「その会社にあった能力提供・貢献ができている」というのは違う時がある・・・。
関西のとある小さなゲーム製作会社が、近所のゲーム好きを寄せ集めて作ったみたいなところだったのに大ヒットを飛ばしたもんだから「入社の条件」を「大卒」とし、次から次へと「魅力的な就職先」として学生たちが応募してくるものだから、遂には「単に大卒」ではなくて、「いい大学」を出た様なのを選りすぐり始めたんだとか。
中には(ゲーム会社なのに)「子供の頃にはゲームなんてやったことが無い」高学歴社員を入社させ始めるに至るのですが、成り上がり社長は「遂にウチの会社にも東大・京大卒が入ってくれる様になったか」とホクホク。
…まあ、考えるまでもなく、あっという間に作るゲームはつまらなくなってきましたとさ…というお話があります。
この辺りもしっかり描きます。
まとめ
もうこれ以上説明はいらないでしょう。
何はともあれ「スティーブズ」を読んでください。絶対に損はさせません!
純粋に「漫画として面白い」ですから。
そして、「その後」も知りたいのであれば「スティーブ・ジョブズ」を読むのがいいでしょう。
あのキャラ(人物)のその後が描かれている形になります。
個人的には「うめ」タッチで、iMac以降の時代も描いて欲しいと思っちゃいますね。
おまけ:スピンオフ漫画の感想
実は「後日談」というかスピンオフはあります。
ちなみにどちらも完全電子コミックで紙版はありません。
「林檎の樹の下で -アップルコンピュータジャパン物語- ×スティーブズ外伝」
日本でアップル(というかマッキントッシュ)を発売するまでの物語。日本語が使えないPCなんて売れるわけがないので、日本語版を作ろうと悪戦苦闘するんですが…というお話。
担当者さんの苦労を思うと泣けてきます。少しだけですが生前のジョブスも登場し、相変わらずやりたい放題やってくれます(爆。
「ソーシャルディスタンス スティーブズ特別編」
こちらはビル・ゲイツを主役にした「コロナウィルスワクチン」編。
確かにあの時のビル・ゲイツの決断は凄かったです。
その時の情勢を描きます。こちらは完全無料で読めます。
ちゃんとジョブスにも触れている…というか半ば主役級の目立ち方をしているので、うめ先生版の「その後」が読みたい方は是非!