打ち切りだけど面白い!定期的に読み返す漫画版「皇国の守護者」全5巻・感想(BW)
紙の単行本しかないのですが、定期的に読み返す面白い漫画「皇国の守護者」、おすすめなので記事にしました。
感想は、ぶらっくうっどが書いてます。よろしくお願いします。
漫画版「皇国の守護者」はこんな人におすすめ
- 佐藤大輔氏のファン
- 硬派な架空戦記ものが読みたい人
- リアルなミリタリーものが読みたい人
- とにかく徹底的に考える、頭を使う漫画が読みたい人
- 渋く、ハードルは高いけど面白い漫画を読みたい人
- 硬派なだけでなく、超能力(テレパシーのようなもの)や虎(大きいホワイトタイガーのような動物)が参戦する戦いや、翼竜・水竜などが出てくるファンタジー設定が入っているので、ミリタリー、ファンタジー・・・様々な要素がミックスされた娯楽作品が見たい人
BWさんは、難しいといってますが、ファンタジー設定多めで、作画も綺麗で読みやすかったですよ!
あらすじ
神代の昔、人と龍との間に結ばれたとされる「大協約(グラン・コード)」が世界秩序の根幹を成す「大協約世界」・・・。
最大の大陸大陸ツァルラントに興った侵略王朝は、いくつもの内陸国家や諸部族を併呑し、超大国「帝国」としてわずかに残る諸勢力をも睥睨していた。
物語の舞台となる国は、ツァルラント東端より海洋によって隔てられた洋上に存在する新興国「皇国(こうこく)」。6つの大島からなるこの島国は、帝国人からは「東方の周辺部族(蛮族)」といわれていた。超大国となった帝国は、皇国を脅威とはみなさず、24年の間大規模な戦闘を経ることなく、皇国はつかの間の平和の中にあった。
だが突然、宣戦布告なしに皇国の最北の島・北領に突如襲来。絶望的な戦局の中、主人公の新城ら「皇国軍」は、国を守る事ができるのか。
漫画版「皇国の守護者」感想
最初の印象は、「タイトルが右翼っぽい」だった
この字面を見て、まず最初に連想するのは「うわっ!右翼っぽい!」ということでしょうね。
それは無理もないです。実際私もそうでした。
これまで紹介した中では「遺族の意向で公式に絶版」が確定しており「電子版も発売されない」ことまで決まっているある意味において最も不幸な作品ともいえます。
ただ、一時期は万単位すらささやかれるほどかなり高騰していた紙のコミック版の値段も落ち着いてきた模様です。GEOなどのレンタルコミックの書棚には普通に置いてある模様です。
私はあまりタイトルが右翼っぽいとは思わなかった・・・。
特殊な設定だけど面白い!
かなり特殊な設定が多いので、「馴染む」のは大変でしょうが、馴染んでしまえばこれほど面白いコミックはちょっと他に例を見ないと言えます。
これまた「何年かおきに読み返す」作品の一つです。
辺境の戦場で追い込まれた現場軍人が、誰もが驚く戦術と知略を駆使してたった600人そこそこの人数を率いて数万人と互角に渡り合うのです。
その凄さを理解するのはむしろ無能・無理解の味方ではなく、現場で対峙した相手方というのが皮肉です。
一切の建前無し!
当然、「裂帛(れっぱく)の気合」で立ち向かえばどんな大軍でも退けられます!
…みたいなことをほざく無能がいるわけですが、
主人公の新城は冷めきっていて
「敗軍の兵に裂帛の気合なんぞあるか
人間だけが死に、装備の損害は皆無だと思うのか?」
…なんてことをモノローグ(独白)しています。
旧日本軍…いや、日本のあらゆる組織…にありがちな「精神論・根性論」ですが、現実は残酷なもので、「気合」などというものは全くあてにならず、それ以外の現実の数字で情勢は決まるのです。
日清・日露戦争ではあんなに強かった日本軍は、第二次世界大戦の頃には建前ばかりが横行し、結局敗戦に至るのは皆さんご存じの通り。
明治の生き残りのバリバリの軍人の多くが指揮を執っていた日清・日露戦争の頃と違い、この頃には軍隊が出来て期間も経過し、官僚主義が横行します。
上に立つのは軍学校での成績上位者…みたいな有様です。
リーダーシップというのは生まれつきの素質であって、学んで身につく類のものではありません。
そんな中、類まれなる「軍人」としての素質を持つ主人公が無双していきます。
平時と戦時では常識から何から全く異なります。
その活躍ぶりがとにかく痛快・爽快。
専門的な軍事用語が飛び交い、「プロ」として対処していくその様がゾクゾクするほど格好いい。
とにかく本当に面白いのです。
佐藤大輔氏
何と言っても原作者の佐藤大輔氏でしょう。
シミュレーションゲーム、ボードゲームのデザイナーとして知られています。今の遊びやすいドイツ製ボードゲームというよりは、細かい数字をちまちまと計算し、細かい手順に従って行い、時には数時間も掛かるような「ウォーゲーム」のイメージですね。
その後、「架空戦記」の書き手に転身され、数多くの作品を残されました。「皇国の守護者」もその中の一作です。
80年代の架空戦記ものは、もともと荒唐無稽な小説が始まりだった
今では当たり前になっていますが、「架空戦記」が登場した頃は、旧日本軍を美化する余りスーパー兵器を出して無双させてみたり、超能力めいたものすら出るのが当たり前だったとか。様々な作家さんによって書かれており、80年代位からブームになって、今もファンがいるジャンルです。
それこそ「震電(しんでん)」というほぼ実践に投入されなかった幻の戦闘機を出すなんてのは序の口で、計画のみで製造すらされていない「空中戦艦 富嶽(くうちゅうせんかん・ふがく)」を出すなんてレベルではなくて、それこそ現在のイージス艦出しちゃうレベルのそれ。
何しろ余りにも人気があるもんだから調子に乗って戦い続け、現実では昭和20(1945)年に終わっているはずの太平洋戦争を昭和28(1953)年になっても戦い続けている例もあるんだからたまりません(悪い意味で)。
昭和28年まで戦い続けてたら、国内は疲弊なんてもんじゃないですよ。戦後復興はどうなるんや!というところです。
佐藤大輔氏の「架空戦記」は現実的な考証の元、書かれたもの
佐藤大輔氏はその中にあって徹底的に「リアル」を追求し、「ここに至って勝てないのであれば、そのずっと前に戦略的に回避或いは克服しておく必要がある」と言った具合に、考え抜いた状況を設定する作風を確立されました。
恐らくは現在書かれる「架空戦記」ものはこうした考え方がベースになっているものの方が多いでしょう。
一方で何事にも調査をこだわり過ぎるためか「締め切り破り」の常習者という評も絶えませんでした。
50代と比較的若く逝去されてしまったことで原作が未完となり、この後説明する顛末もあってコミック版「皇国の守護者」はこれだけの力作、傑作でありながら続きが書かれないことが確定してしまっています。
佐藤大輔氏の作品の中でも「皇国の守護者」は異質なのですが、それはこの後解説します。
今回取り上げるのは「皇国の守護者」のコミカライズ版になります。
作画を担当したのは、伊藤悠先生
作画担当の伊藤悠さんはこの硬派な絵柄でありながらどことなく繊細な筆致も感じさせる作風です。
読み終わった後に女性であることを知って驚いたのですが、巻末のおまけ漫画におけるキャラクターの愛着などはなるほどと思わせるものがあります。
アニメファンならもしかしてこの絵柄にどこか見覚えがあるかもしれません。
「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」のキャラクターデザインを担当されたと言われれば「なるほど」と思われることでしょう。
現在も「シュトヘル」などで活発に活動していらっしゃいます。
「皇国の守護者」の、個性の強すぎる設定
この明らかに日本をモチーフにしている「皇国」では漢字が用いられ、名前も日本風です。
若干構成が違うながらも「皇室」があり、ある程度の貴族制度は残っている模様です。
明らかに戦前のロシアがモチーフになっている「帝国」が実質「北海道」に侵攻したところから始まります。
さて、文明程度なのですが、何しろ「空軍」がありません。
偵察のための航空機すら無いとなると、文明程度は第一次世界大戦よりももう少し前の日露戦争くらいでしょうか。
存在するのは陸軍と海軍のみ。
更には、レーダーや無線通信もありません。
銃器に関してですが、拳銃、ライフル、そして大砲などはありますが、マシンガン・サブマシンガンは無い模様です。
幕末の時代劇をご覧になっていた方ならお分かりの通り、あの時代にはもうリボルバーの拳銃などはありますが、「火薬を突き固める」と言っているので恐らく火縄銃の様なマスケット銃(先込め式)です。
とはいえ、ただこれだけならば「18~19世紀の戦記物」として読めばいいということになります。
ここからが違います。「設定」の話ばかり続きますが、ここだけは何としても呑み込んでもらわないと話が続きませんので。
戦争のルール「大協約」がある
簡単に言うと、どうやらこの世界では「戦争のルール」が多くの国の間で共有されている模様です。
恐らくは捕虜の取り扱いを定めた「ジュネーブ条約」みたいなものという理解でいいのではないかと思います。
勿論、平時の交通ルールですら不届き物は普通に破るわけで、これに甘え切るのは非常に危険ではありますがかなりの程度この時代の軍人の行動規範となっている模様です。
それは「侵略軍」である「帝国」ですら同様です。
お堅い戦記ものと思いきや、ファンタジーな「竜」の存在
ざっくりいうとこの世界はお堅い、油と硝煙とそして汗まみれの血の匂いばかりが漂ってきそうな「戦記物」ではありません。
なんと、人語を解して話しかけて来る「竜」が存在します。
とはいえ、ファンタジーの様に洞窟の奥底で宝箱を守っているわけではなく、日常的に現れてはごくまれに人間と会話を交わす程度。
劇中の表現を借りるならばどうやら個人的な関係を築くことが出来る人間はごくまれである模様です。
龍の存在も面白いですが、作中では「猫」と呼ばれている鋭い牙の大きなホワイトタイガーもカッコ良くて猫のように可愛いところもありよかった。
物凄く制約のある「チート」もの
さて、ここまでが前提です。
現実で言うと第一次世界大戦が始まる前、世界は「グレート・ゲーム」と呼ばれる状態になっていました。
世界は「ロシア」か「大英帝国」(*)の二大帝国がにらみ合う状態になっていた訳です。
(イギリスと言ってしまうと、アイルランド、スコットランド、ウェールズへの言及がないことになるので「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」の略。ちなみにこの4か国は今でも連合チームを組めないほど独立性が高く、サッカーワールドカップではイギリスだけ4つも代表チームを出すことに)
ここで「ん?スペインとかポルトガルとかアメリカは?」と思われた読者は鋭い!
現実に照らすならアメリカはこの時点では弱小国なのでまだ気にしなくてよし。スペインもポルトガルもイギリスにけちょんけちょんに負けて「大国」の次点ポジです。
その「ロシア」は「不凍港」(凍らない港、ロシアは北にありすぎるので冬になっても凍結しない港が欲しくて仕方が無かった)を求めて常に南下しようとしており、ずーっとアジア圏は危険にさらされていたのです。
恐らくこの世界の「帝国」も現実のロシアみたいなものでしょう。
ただ、ロシア…もとい「帝国」が伝統的な「歩兵」「騎兵」とそして「砲兵」で構成されているのに対し、「皇国」側には特異といえば余りにも特異な「特徴」がありました。
どういう訳か「皇国」にだけ存在するオーバーテクノロジー
第一に「猫」。
主人公の新城直衛(しんじょう・なおえ)は通称「猫」とよばれる大型の肉食獣を操ります。
サイズだけそのまま数倍にして人間よりもはるかに大きい「サーベルタイガー」と言う感じです。1巻及び5巻の表紙に勇ましく登場しています。
何しろ空爆が無く、せいぜい大砲くらいしかないので、白兵戦でぶつかり合うのが基本です。
騎兵を相手にしても全く引けを取らない「剣牙虎」の頼もしさは異常。
この時点でまず「こりゃ普通の漫画じゃないな」と言う空気が濃厚です。
第二に「翼竜」。
先ほど「竜」を乗りこなすのは難しいというお話をしましたが、ビッグサイズの「天竜」ならば難しくても、ちょうど馬くらいのサイズの「翼竜」ならばそれほどは難しくないみたいです。
映画「アバター」で主人公たちが乗りこなしている翼竜をイメージしていただければ大丈夫です。
ただ、あくまでも「連絡・偵察用」、「貴人の緊急移動用」がせいぜいで「空軍」を組織出来るほどではない模様です。
第一次世界大戦の頃はやっと飛行機が飛んだレベルなので、偵察任務くらいが関の山でした。
どうにか攻撃しようと積み込んだレンガや釘を手で落としたこともあったそうですが、余り戦果は期待できそうにないですね(爆)。
ちなみにこの頃複葉機である真紅のフォッカーDR-1(ディーアール・ワン)を操っていたのが「レッド・バロン」ことリヒトフォーフェンで、この人が「赤い彗星」ことシャア・アズナブルのモデルになりました。
さあ、そして最大の一方的アドバンテージが「導術(どうじゅつ)」。
劇中では敵軍に「怪しげな術」と言われていました。
ざっくりいえば「超能力」ですが、この世界には当たり前に存在する技術体系らしく、これを専門に扱う「導術兵(どうじゅつへい)」が存在します。
スキンヘッドにそり上げた頭に、額に埋め込まれた銀板が特徴。
お互いに無線通信(テレパシー?)を行うことが出来、ある程度はレーダーの役割も果たします。
周囲の大勢の人間が固まって移動していることくらいは察知できるらしく、「皇国」軍はその点一方的な情報アドバンテージを有していると言えます。
ちなみに「導術」は酷使するとそのまま兵の体力・精神力に直接響くため、便利には違いないんですが、いかにうまく運用するかが司令官の腕の見せどころというところです。
陣形など、とにかく考えることが多い
漫画「キングダム」ではしょっちゅう「陣形」の話が出てきます。
空軍が無い時代にはとにかく地面の上でぶつかり合うことになるため、どういう形で兵隊を並べるかが最重要課題でした。
密集陣形を組む「ファランクス」などが有名ですね。
この時代は「銃」を持つことが可能であり、かつ「大砲」「榴弾砲」なども存在するため、これらを総合的に組み合わせて戦術を構築しなくてはなりません。
恥ずかしながら「方陣」の概念はこのコミックで知りました。
「方」とは「四角い」と言う意味です。「前方後円墳」などにも使われていますね。「前が四角くて後ろが丸い」という意味です。
要するに「鉄砲」が存在することを前提とした大群の運用陣形の一種です。
例えば古代の戦場では考えなくてよかった銃の常識として「味方同士の火線を避けて配置する」があります。
よく漫画などで主人公たちをずらりと並んで囲んだギャング軍団が一斉に周囲から集中砲火を浴びせる場面がありますが、あんなんじゃ主人公たちに当たらなかった弾丸は反対側の味方に当たりまくるでしょうね。
なので、対象に対して「交差する」様に配置するのが基本です。これなら味方同士の同士討ちもありませんし、「横に動いてかわそう」としても、横から狙ってる側にすれば直進してるだけなので狙って当てやすくなります。これを英語で「クロスファイア(十字砲火)」と言います。
そして「鉄砲」は万能ではなく、「射程距離外」からは当たらないどころが「届きません」。
なので、ずらっと横に並んで通せんぼしている敵に対して、槍上に一列で突っ込んできて一点突破したりできるわけです。
こう書いていると「考えてるばかりで面倒くさいコミックだな」と思われた方がいるかもしれません。
それはある程度正しいです。
こういう「戦場での考え事」をひたすら楽しむコミックなのです。
かなり前提の多い「無双状態」
「イセカイ(Isekai)」という英語にまでなってしまった「異世界転生」ジャンル。
多くは現代文明を持ち込んだり、「異世界」とは名ばかりの「ゲームの世界」で「設定」によって自分だけ強くなった主人公が無双したりします。
正直余り読んでいないし、見てもいないんですが、まあ「ちょっとずるしようが自分だけ強い状態を楽しみたい」気持ちは分かります。
「皇国の守護者」もそういった側面があり、「導術」で連携し、レーダーで動きを察知しながら戦う「皇国」軍(主人公が操るわずか数百人)に対し、数も練度も装備も何もかも圧倒しているはずの「帝国」軍がひたすら振り回され続けるのです。
にっくき「侵略者」連中が一方的にやられていくんですからこれほど痛快なことなんてありません。
特異な主人公
原作小説のソフトカバーは序盤の巻の挿絵が塩山紀夫さんだったりするので、「ボトムズ」っぽい雰囲気なのですが、今回のコミックは原作に忠実にビジュアル化した結果、三白眼でずんぐりむっくりの小男となりました。
実は上記の便利な小道具が仮にあったとしても、その「意義」が理解できないことには使い物になりません。
実際、最序盤で見捨てられたも同然に戦死する「上官」は、自分の不安解消のため、必要が無い場面でも「導術兵」を酷使しまくって何人も使い潰していましたし、海軍のお偉い連中は愚にも付かない言い訳ばかりの「戦況報告」で無駄使いしています。
それに対し、主人公・新城直衛は実に見事な運用で大軍を手玉に取り続けます。
これが面白いんですよねえ…。
最初の内は侵略者のクセしやがって…いや、侵略者だからか…人種差別的な悪罵すら発していた「敵」も余りの好敵手ぶりに半ば関心し始めます。
敵軍の投手が余りにも見事に大谷翔平にホームランを打たれて、不覚にも感動してしまうみたいな話しです。
旧日本軍っぽい?
どういう訳かこれらオーパーツは「皇国」にはあっても、「帝国」にはありません。
ここまで恵まれた状況でありながら、格式と家柄だけで出世した大将連中は序盤に大敗し、自分だけさっさと逃げ出してしまいます。
まあいかにもありそうな話です。
自分だけやりたい放題やって危なくなったら自分だけ逃げるトップ。
主力軍隊が本国に逃亡するまで、船に乗り込むための時間を稼ぐために主人公である新城が奮闘する羽目になるわけです。
主人公の新城直衛は、戦災孤児ながらも有力な家(日本で言えば五摂家みたいなところ)に貰われたことでそれなりのバックアップはあるものの、士官学校出身のエリートと言う訳ではない上に見た目から「いやしい面(つら)付き」とさげすまれ、疎外され続けます。
しかしその実力は折り紙付き。本格的に動き出すのは2巻の後半からなのですが、「上官」に当たる人物が全員戦死したことでやっとでした。
要するに「ムラの秩序」に新城以外の全員が捕らわれているわけです。
日本は兵隊の質は世界一と言っていいほど高いのに、指導者がアレなので結局戦争では負けてしまいます。
その「無能な軍の上層部」ぶりをフィクションとはいえ嫌と言うほど描き切っています。
連載停止・・・もっと続きが見たかった!
単行本で言えば4巻において一応戦況は少し落ち着きはしました。
ただ、周囲の状況をととのえ、いざ次の展開を迎えようかというところで唐突に終わってしまいます。
元々「筆が遅い」事で有名な佐藤大輔氏が送られてくるコミカライズの原稿チェックを全くと言っていいほどやってくれず、待たされすぎてしびれを切らしたコミック版サイドが了承を受けていない現行の仕上げに着手し、原作者でありながら佐藤大輔氏を通さない形で続きを次々に作成し始めてしまいました。
それを受けて、自分の原稿チェックの遅延が原因なのにそれを棚に上げてブチ切れた原作者と揉めてしまい、そうこうする内に亡くなってしまったことで小説も漫画も永遠に未完になってしまいました。
無事に連載が続いていればあと何巻、あの圧倒的クオリティの作品を楽しめたのだろうかと考えると残念でなりません。
まとめ
何しろ序盤も序盤で終わっているため、これからどうなるか楽しみで仕方がありませんがせめてもう少し先まで読める小説版に手を出すくらいしかないのでしょう。
とにかく、「上司というのはここまで考えなくてはならないのか」と参考になります。
言葉で抑え込むだけではなく、ちゃんと立場を考え、寄り添ってしかもそれでいて奮い立たせなくてはなりません。
そこに持ってきて「導術」という「超能力」の存在や「竜」などのファンタジー寄りの要素…。
正直、これだけの情報を文字だけで理解できたとは到底思えないので、「理想的な」コミカライズでした。
原作が未完なのでそれはかなわないながら、出来ればこのコミックで最後まで読みたかったです。
私は五冊を4時間弱ほどで一気読みしました!面白かったー。できれば続きが読みたかったですねー。残念。