漫画「ゴールデンカムイ」全巻感想・ネタバレあり
感想は、ぶらっくうっどが書いてます。よろしくお願いします。
漫画「ゴールデンカムイ」はこんな人にお薦め
- 「面白い」漫画が読みたい人
- 歴史好きな人
- 豆知識好きな人
漫画「ゴールデンカムイ」ネタバレあり感想
決定的なネタバレはしませんけど、ラストまでの流れに軽く触れますので「何一つ知りたくない」方は是非読んだ後に記事をどうぞ!
「凄い漫画があるらしい」と漫画好きの間で話題になってた作品
最初に存在を知ったのは連載開始間もない頃で、まだ単行本も数冊しか出ていない頃でした。
「24人の逃亡凶悪犯の身体に刻まれた刺青の地図を頼りに莫大な金塊を探す」という何とも壮大な筋立て。
舞台が雄大な大自然の北海道ということでスケールも大きく、登場人物がどいつもこいつも「濃い」連中ばかり。
これで面白くならないわけが無い…というところです。
フィクションではある・・・が、登場人物にモデルはいる
この漫画、フィクションではある・・・のですが、登場人物の大半に「モデル」がいます。
「不死身の分隊長」こと和製ターミネーター舩坂弘に材を取った「不死身の杉元」こと杉元佐一や、「昭和の脱獄王こと白鳥由栄」がモデルのコメディリリーフ、白石由竹(しらいし・よしたけ)などなど。
流石に「鶴見中尉」のモデルはいない…と言いたいところですが、「第七師団(北鎮部隊)」は普通に実在しますし、鶴見中尉にすらモデルはいます。
一応はフィクションではあるのですが、「現実の日本」を舞台にしているため、トンデモない分量の取材がなされています。
これほどまでに「参考文献」ページが充実している漫画はそうないでしょう。
漫画巻末の参考文献の多さに、毎度、圧倒されます!
更に、「サムライスピリッツ」のナコルル・リムルル
や「うたわれるもの」のエルルゥ
等である程度はアニメ・漫画・ゲームファンにも存在を知られていた「アイヌ」が恐ろしいほどの取材の賜物で活き活きと描き出されていたのも特徴的です。
こういう場合に登場する「アイヌ」はどうしても「差別を受けた少数民族」として描かれがちなのですが、取材を重ねるうちに「可愛そうなアイヌはもうたくさん。『格好いいアイヌ』『強いアイヌ』を描いて欲しい」というリクエストにバッチリ応えているのが最高です。
普通は「クマ」が出てきたら「どうやって逃げおおせるか」を考えるはずのヒロインが
「どうやって食べるか」
を考えるというのはトンデモない逞しさです(笑。
その為、「2ページめくれば新しいうんちくが登場」するほどの膨大な知識・情報に埋め尽くされたコミックとなっています。
そんな「北海道や時代の博物誌コミック」めいたものが面白くなるの?と思われるかもしれませんが、これがまあ面白いったらありゃしない。
確かにフィクションではあるのですが、その90%は「事実」で固められた上でのフィクションだからこそこんなに面白い!…という側面は間違いなくあると言い切りたいですね。
「生きた知識」・・・パイナップルアーミー、MASTERキートン
90年代にコミックファンを震撼させた一連のコミック群がありました。
「パイナップルアーミー」
「マスターキートン」
などの一連の浦沢直樹作品です。
ここにもまた「膨大な情報」が登場します。
ただ、それがまたトンデモないんですよ。
「マスターキートン」の第1話、第2話
例えば「マスターキートン」の第1話。
ここで「大きめのスプーン」を「即席の投石器」として使い、ギャングを撃退します。
「風の強い場所では銃よりも投石器が有利」という豆知識の登場です。
第2話ではこんな感じ。
主人公のキートンがナイフを使う相手と「鉄パイプ」で戦うのですが、突如鉄パイプを地面に投げ捨てます。
相手は当然、「敵の唯一の得物」である鉄パイプを取ろうとするのですが、そこに一撃を加えて勝利。
これが「敵に武器を印象付けた後、それを意図的に捨てることで敵の思考を操る」という「南米イロコイ族の戦闘術の奥義」なんだそうです。
そもそも「南米イロコイ族の戦闘術」を一体どうやって調べて知識として吸収したんでしょうか。
しかも「ただ知っている」というだけではなく、見事に「漫画のクライマックスの場面」で見事に使いこなしているのです。
これは「ただ知っている」とか「ちょっと調べる」くらいでは絶対に出来ないほどレベルの高い話です。
言いたいことはお分かりですね?
「ゴールデンカムイ」の膨大な「知識」と「取材量」に圧倒される
漫画「ゴールデンカムイ」に出て来る「知識」はそのレベルで使いこなされているものばかりなのです!
大体、「グルメ漫画」もかくやというほど「アイヌ料理」が出てきます。それこそ「目の前で採ったクマ」とかですよ。
ゴールデンカムイの影響で、ジビエ料理が流行りました(と、私は思っている)。刺青人皮は、動物の皮を剥ぐ方法で広げると、地図になるとか、狩猟知識だけでもすごいです。
ちなみに「パイナップルアーミー」で「スペツナズナイフ」というアイテムが出て来るんですが、日本のミリタリー入ったアニメなどでは馬鹿の一つ覚えみたいにこればっかり出てきていた時期がありました。
ほぼ間違いなくここから引用されていますね。また「粉塵爆発」などもここからでしょう。
閑話休題。
スペツナズナイフ、粉塵爆発、確かにそれ以降、色んな日本の作品で観るように・・・影響すごい
「ゴールデンカムイ」は、歴史からあらゆる引用してくる!
何しろ「土方歳三」が出て来るくらいなので、細かい知識は「幕末」にすら及ぶのですが、それ以外にも「パロティ」が満載です。
「江渡貝弥作」(えどがい・やさく)くんという人物が出てきますが、これは「サイコ」「羊たちの沈黙」を始めとしてもはや「ジャンル」と言って構わないほどモデルにしたキャラクターでホラー映画その他が作られまくり、今も作られているアメリカの伝説的な殺人鬼「エド・ゲイン」が元ネタでしょう。
ただ、これでもまだ分かりやすい方で、「扉絵」とかで遊んでくるのです。
21巻202話『狙撃手の悪夢』表紙は、映画『13日の金曜日PART2』ポスターのオマージュ…とかそういう感じ。
これに関しては「ゴールデンカムイの元ネタ専門ブログ」も存在しているのでそちらを見た方がいいでしょう。
アニメ版、実写版、そしてラスト(ネタバレあり)
この人気ぶりからすぐにアニメが作られ、こちらも良作で大ヒット。
2024年に実写映画が公開され、そのクオリティの高さにうるさがたの漫画ファンも脱帽したのは記憶に新しいところです。
まあ、このペースで映画を作ってたらいつまでたっても終わらないので、途中から実写ドラマに切り替えたみたいですが実に懸命な判断だと言えます。
「和製ごった煮ウェスタン」の異名も取るこの漫画、ラストは「列車バトル」になります。
数々のアクション映画の名作で戦いの舞台になった「列車」。
猛烈な速度で背景が動いており、落下イコールほぼ死という「動く密室」でもある「列車」は正に「アクションの全てが詰まっている」と言ってもいい最高の舞台です。
余りにも壮大であるがゆえに「結局曖昧なまま」終わる結末になってもおかしくなかったと思うのですが、全てに決着をつけて最高の形でフィニッシュを迎えます。
完結後のコミックでの付け足しページで更に「相変わらず」の登場人物たちがその後日本史に大きく影響を及ぼしていたのでは?と思わせるラストにも思わずクスリ。
コミックファンで読んでない人がいたら絶対に読んで間違いなしと太鼓判を押しましょう。
まとめ:女性ファンが意外と多い?
実はこの頃やかましい「ポリコレ」にもナチュラルに配慮した内容となっています。
メインヒロインといっていいアシリパさんは、あらゆる登場人物たちから「性的な目」で観られることが一切なく、そうした扱いも受けず、意識すらされません。
裸はやたらに出てきますが「おっさんのハダカ」ばっかりです(本当)。
あれは作者が一番描きたいところ・・・のように見える(笑)
そもそも「恋愛要素」がほぼなく、あるのは(自主規制)関係だけ。
主要登場人物で結ばれるキャラはいるんですが、全くドロドロしません。
その為なのか分かりませんが、あちこちで開かれた「ゴールデンカムイ」イベントや、ゴールデンカムイに関連させたアイヌの展示会などでは「女性比率」が半分以上を占めてにぎわっていたそうです。
私の個人的な感想では、キャンプなのりも楽しいし、「男気」がカッコ良いと思ってます!あと、変態な犯罪者はたくさん出てくるのですが、例えばロリコン男が出てきてアシリパさんが襲われたり・・・は「絶対ない」のも安心して読めるところです。読んでいて心地よい倫理観のバランスが好感度が高いです。
この原稿を書くにあたって結局全巻購入して(序盤はレンタルしてました)読み直しているんですが、やっぱり面白い!です。
(映画ゴールデンカムイの感想で言ってるように、1ー11巻は後でカイミが購入!)
なんとも間合いが微妙になる妙なギャグのやりとりも最高!
現代が生んだ最高のコミックの一つと言えるでしょう!