漫画「幻覚ピカソ」3巻完結 感想(カイミ)
古屋兎丸先生の「幻覚ピカソ」、3巻完結でサクッと読めるし、面白いし!でおすすめします!!
主人公が劇中で描く「心の絵」の緻密さ!もともと油絵を描いていた作家さんなので、絵画と漫画の融合が違和感なくコマに配置されていて、アート作品の中に迷い込んだようです。
感想は、学生の時ずっと美術部だったカイミが書いてます。よろしくお願いいたします。
作品概要・あらすじ
作品概要
ガロ系の作家だった古屋兎丸(敬称略)にとって初の少年漫画。掲載誌は集英社のジャンプスクエア、単行本は「ジャンプ・コミックス」。2009年ー2010年、全3巻完結。ジャンルは「学園・ラブコメ・ファンタジー」。
1巻は本編約245P(加えておまけイラスト4Pと精神科医の解説2P)、2巻は約281P(加えておまけセルフパロ漫画など9P)、最終巻の3巻は約307P(加えて作者の手書きあとがき4P)、と体感として4巻ほどのボリュームがある。紙の単行本には、全巻の巻頭に折り込みカラーイラストが封入されている。
あらすじ
主人公の葉山ヒカリは、絵を描くことに真剣に取り組む少年で、レオナルド・ダ・ヴィンチを尊敬している。それなのに上履きに書いた名前「ヒカリ」を読み間違えられ、あだ名は「ピカソ」になってしまった。
ヒカリはクラスメイトの山本千晶と帰り道の川で2人だけの部活「河原部」をしている。河原でめいめい好きなことをする部活(ヒカリは絵を描き、千晶は本を読む)で、その河原で2人とも事故に巻き込まれ、千晶だけが亡くなってしまう。
しかしある日突然、ポケットサイズの山本千晶が現れ、人助けを手伝ってほしいと言われる。渋々手伝うことにしたヒカリは、スケッチブックと2Bの鉛筆で、悩みを抱える人の「心の絵」が描けるようになった。
その「心の絵」の中へ入り込む(ダイブする)ことで、悩みを解決する手助けができるようになったヒカリは、周囲の人の悩みを解決しようと奔走する。
漫画「幻覚ピカソ」は打ち切りなの?
この作品は打ち切りではない。もともと全8話の予定(コミックスで言うと2巻くらい)だったが、作者の意向でストーリーを綺麗にまとめるために、話数を加えて3巻目で理想的な形で完結している。
感想・個人的おすすめポイント
主人公に愛着・親近感が持てる(特に創作好きの人!)
若い頃は油絵を描き、アーティストを目指していた古屋先生が描くからこそ、毎日教室や河原で絵を描く主人公が臨場感を持って描かれています。
使命感を持って人助けをする・・・という主人公でなく、「手が腐って、全身が腐っていくのが嫌だから」人助けをする、と言うちょっと後ろ向きな理由なのも笑えて親近感が持てます。
緻密で美麗な絵と、その絵に隠された心の闇へのヒント
主人公が、スケッチブックと2B鉛筆で描く絵の緻密さ!
実際に古谷先生が鉛筆で描いた絵を漫画のコマに入れてるのです。
絵画と漫画の融合、素晴らしい。
毎回、劇中で助ける人の「心の絵」を描くのですが、1ページ丸々使っていて、美麗な鉛筆画が大きくみれます。
この不穏な空気の漂う美麗な「心の絵」には随所に「その人の悩みがどこにあるか」を解決するヒント(うさぎが穴だらけだったり、巨大な人がいたり)が隠されています。
これから読む人は、ページをめくる前に、ちょっと手を止めてみると良いかも。
どういうことを表した絵なのか、自分で想像してみてから、読み進めるのも楽しいと思います。
絵の中のうさぎや人物は、まるで牛久大仏(茨城県牛久市にあるブロンズ製大仏立像・全高120m)のように巨大です。
巨大な建造物の中に入っていくような描写は、人の心の中へまさに「入っていく」イメージと重なります。
まず、絵の中に入る(ダイブする)→ 絵の中の巨大なものの中へ入り→ さらにそこで何か見つける、というように、少しずつ心をとき明かす様が具体的に、視覚的に表現されています。
私が思ったようなことがもっと詳しく、1巻の巻末あとがきにも紹介されていました。あとがきを読むことで、どんどん作品の味わいが増します。
メインの登場人物(クラスメイト)に思いやりがある
この「幻覚ピカソ」はクラスで明るい人・暗い人・凝り性なオタクな人も、「そういう人だよね」って心の中で思ってる・もしくはヒソヒソ話すだけで、酷いいじめをしたりしない(メインの登場人物は)。だから読んでいて、気持ち良いです。
まだ子どもだけど、良い意味で甘えが無い。一生懸命自分で考えて、自立して大人になっていこうと育っているという感じが読んでいてしました。
学校の先生も主人公を気遣っていて(千晶を目の前で失った主人公を本当に心配している様子、それをコメディタッチで描いていて、面白い)優しいから、生徒もみんな良い子なのかしら!?あまりメインに嫌な人が出てこないから、安心して読めてホッとします♪
序盤のヒカリのポケットに入れられた手紙と、天使の山本千晶
最後までのネタバレはしないですが、序盤、河原部で生前の山本千晶が「あとで見て」とピカソのポケットに手紙を入れます。そのあと事故にあって亡くなってしまうのですが。
最後まで漫画を読んでみると、あーなるほど。と。
だから、天使の千晶はポケットから出てきたのかと。
一番救われなければならない闇を抱えていたのは●●(漫画で最後まで読んでみてください!)だったと。
手が腐って、全身が腐っていくのは、そういうことだったのかと。
この作品は、みなまでは説明しておらず想像で補完させる感じなので、様々な思いをめぐらせられて面白いです。
読み返してみると、また自分なりの理解が深まり、人によって解釈が違ってくると思われるポイントがあるところも面白い。
このような「個人の読者の解釈・想像によって」味わいが違う作品は、語りたくなります。
漫画「幻覚ピカソ」はこんな人に読んでほしい!
心が疲れている人
環境が変わったり、新しいことに挑戦したり、心が疲れてませんか?
何もかもうまくいかないような気がして、自暴自棄になってませんか。
また、もっと酷く落ち込んでいる・・・自分にとって大切な人や大切なものを失ったりして、なかなか立ち直れなかったり。
そんな時には漫画「幻覚ピカソ」を読んでみてください。
一見、充実してそうに見える人も「心に闇」を抱えていることがあります。
登場人物がみんな優しくて、他者への思いやりがあり、心が洗われるようです。
私にとっては、心が整う漫画なのかな、と思います。
オタク趣味・クリエイティブなことに興味がある方
主人公が絵描きを目指していて、絵を描く時にブツブツと独り言を言ってるのですが、「わかる」と共感できる方もいるかも知れまん。
クラスメイトに読者モデルの女の子や、音楽が好きな子、また親がアーティストの子もいたり、同人誌の活動(腐女子)をしてたり、好きなアニメ作品を語ったり、様々な特徴をもつ子たちが登場します。
そのクラスメイトの、誰かに共感できる人がいるかも知れませんよ。
学園もの・ラブコメ・ファンタジーが好きな方
学生だったのは遠い昔(笑)ですが、あの頃はどんなだったかなー、と懐かしくなりました。
ちょっと切ない学園ラブコメ・ファンタジーという感じです。
「学園もの・ラブコメもの・ファンタジーもの」が好きな方におすすめします!
まとめ 漫画「幻覚ピカソ」
漫画「幻覚ピカソ」は、とても爽やかな読後感です。
年代問わず、どんな方にも、安心しておすすめできる漫画だと思います!
ちょっと疲れた時に、心が元気になる読むサプリのような感じ。
おすすめします!
漫画「幻覚ピカソ」はどこで読めるか
紙の本で「幻覚ピカソ」を読むには
2009年ー2010年に完結している漫画で、2023年の現在で紙の本で欲しい方は、新刊ではなかなか手に入らない状態です。
電子書籍で「幻覚ピカソ」を読むには
電子書籍だとAmazon、楽天Koboなどで購入できます。