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漫画「べしゃり暮らし」20巻完結 感想(BW)

kaimi
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作品概要・あらすじなど

作品概要

森田まさのり先生による「お笑い芸人」の漫画。

最初は「週刊少年ジャンプ」にてジャンプコミックス1巻(2006年2月8日)ー3巻(2006年10月9日)まで出版され、掲載誌を変えてヤングジャンプコミックスで19巻(2015年7月22日)まで出た。19巻までで一旦、エンドロールなども出る形で完結している。

(写真は、ジャンプコミックス版の「べしゃり暮らし」第1巻。)

のちに、19巻の続きの話となる20巻(2019年9月24日)が出た。

作者も20巻の続きが描きたいと話しているが、現在(2023年6月)はまだ出版されていない。

森田まさのり先生について

「週刊少年ジャンプ」で1988年から「ろくでなしBLUES」、1998年から「ROOKIES」を連載。同誌で2005年から「べしゃり暮らし」を連載するも、体調不良のため休載。掲載誌を「週刊ヤングジャンプ」にうつし不定期連載となった。

アシスタント時代は原哲夫先生の元で師事されていたのも納得の「劇画風」の写実的な濃い絵柄で、人間が喋っている時の「口」の形にこだわりがある。

カイミ
カイミ

森田先生の「あひる口」は、とっても印象に残ります。

劇画風なので、一見するとシリアスな漫画なのかと思いきや、かなりの頻度でギャグ・コメディシーンが入るのも特徴。また、見た目はブルーハーツにソックリだけど、当人とは別人のキャラクターを、自然に漫画に馴染むような感じで(?)入れてきたり、阪神の選手の名前が漫画の中で出てきたりのもファンの楽しみの一つとなっている。

ぶらっくうっど
ぶらっくうっど

漫画を読んでて、阪神ファンなんだろうなーと。(私は中日ファン)

あらすじ

主人公の上妻圭右(あがつまけいすけ)は、学園の人気者で自称「学園の爆笑王」。毎日人を笑わせる事に命をかけているが、芸人になることを考えたこともなかった。将来はそば屋を継ぐことになっており、そば屋を営む父はなぜか芸人を嫌っていて、家ではお笑い番組を見にくい状況だった。

ある時、元芸人の関西人・辻元潤(つじもとじゅん)が転校してきたことで、圭右は芸人を目指す事になるが・・・。

バックステージもの漫画について

ほぼあらゆるジャンルを描いてきた漫画

 漫画はほぼあらゆるジャンルを描いてきたと言われています。

 当然その中には「バックステージもの」と言われるジャンルもあります。

 代表的な例が「漫画家」の裏側を描いた「まんが道」ということになります。

 私たち読者は、モデルになっている「藤子不二雄」先生が大成功することを知っているのである意味安心して読むことが出来ます。

 またフィクションの「燃えよペン」や島本和彦版の「まんが道」ともいえる「アオイホノオ」などもそうですね。

 …が、実際はそう甘い世界ではなく、夢破れて諦める人の方が多いでしょう。

 そうした「漫画業界の暗部(多くは自業自得)」を描く漫画もあって、その代表が「まんが極道」(唐沢なをき)だったりします。

 つまり、「漫画は何でも描ける」訳です。

 そんな中、「鬼門」「これは描けない」とされていたジャンルがあります。

 一つは「グルメ漫画」。

 何しろ読んでいるだけでは基本は「味がしない」ですからね。

 ただ、今や「グルメ漫画」は一大ジャンル。

 確かに「味はしない」んですが、いかにもな料理うんちくや対戦もののエッセンスを取り込むなどは序の口で、遂には「ハウトゥもの」に加えて「人間ドラマ」まで取り込んでしまいました。

 「料理マンガ」は当初は「料理なら何でも扱う」のが当たり前だったのに、「カレー漫画」「そば漫画」など、単一の料理を専門に扱う漫画まで成立していき、遂に「ダシ(出汁)漫画」なんてものまで存在します。

 長い間「これは描けない」とされていた「音楽もの」も漫画は取り込みます。

 何しろ「音がしない」ですから、描くのは難しかったはずです。

 多くは「ミュージシャンを描く」お仕事、ジャンルものとしてではありますが、歌唱シーン・演奏シーンに力を入れている漫画もありますし、恐らくは作者自らの手によるものであろう歌詞が掲載され、それが劇中のドラマに直結している場面もあります。

 …が、やっぱり絵の上に直接歌詞を載せるだけでは「実際に聞こえている」様に楽しむのは難しいです。

そして、「お笑い芸人漫画」が登場した

 そして「お笑い芸人漫画」です。

 「ギャグマンガ」「お笑い漫画」ではなくて、「お笑い芸人漫画」なわけです。

 実は「漫画家マンガ」では、こういう「あるある」がありました。

 実体験を元にした、「伝記もの」に近い「まんが道」「アオイホノオ」ならば許されても、「バクマン」などの様に、純粋にフィクションとしての「バックステージもの」として「漫画家マンガ」であれば、本来であれば「避けて通れない」はずのものです。

 それは「劇中に、『実際に描かれた漫画』が登場するかどうか」です。

 「漫画家マンガ」の代表であろう「バクマン」には基本的には「一コマカット」程度なら登場するのですが、基本的には「一世を風靡して大ヒットしている(はずの)漫画」は登場しません。

 …というか、ある意味において「出しようがない」のです。

 だって、「大爆笑を呼んでいる大ヒットギャグマンガ」ということで登場した漫画が「実際に読んでみたら全く面白くないぞ」ということになってしまいかねない訳です。

 「スパイダーマン・ブギ」が実際に200万枚売れそうにないみたいなもんです(マイナーなギャグですいません)。

 ということで、そうしたガジェットは「大ヒットしているもの」として扱う単なる小道具みたいになっていきます。

 少なくともオタク・サブカル界隈で一世を風靡した「サルでも描けるまんが教室」(竹熊健太郎・相原コージ)で衝撃的だったのは、劇中で描かれる「作例」として

「とんち番長」

という漫画が描かれるのですが、なんとこれ実際にページそのままで劇中に掲載されているのです。

 これは相当に勇気のいる行為です。

 だって「作例」が「つまんない」ということになれば「漫画の描き方漫画」としては説得力など全くなくなってしまうからです。

 これは現役バリバリのギャグマンガ家だった相原コージ氏と組んでいたからこそなしえた奇跡みたいなものです。

 そもそも「サルでも描けるまんが教室」そのものが「漫画の描き方ハウトゥ漫画のパロディ」みたいな重層的なメタフィクション構造を持つので、「全然つまんない漫画を「面白いもの」」として掲載するという手段もあったはずなのです。

 にもかかわらず正面から描くことを選択しました。

 読んだ感想ですが、ちゃんとギャグマンガとして面白かったです。流石にここだけ抜いて単独で出版されるほどのパンチ力は無いと判断された模様ですが、それでもちゃんと笑えて楽しめました。

 ちなみにこの「サルでも描ける~」というフレーズは一部で…今風に言えば…特大のバズりをして、その後「〇〇でも出来る××」みたいな本が山ほど出版されました。

 下手すると今でも出ています。

漫画「べしゃり暮らし」感想(ネタバレなし)

超絶作画でありながら、基本はギャグ漫画

 閑話休題。

 そこで「お笑い芸人漫画」です。

 「北斗の拳」もかくやという超絶作画でありながら、基本はギャグマンガというのが特徴的で、実在の人物を全く隠さずにパロディとして出しまくるのが面白い作風です。 

 「ろくでなしブルース」ではブルーハーツやプロレスラー、ボクサー。

 「ルーキーズ」では「野球選手の名前(主に阪神)」…と言った具合。

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 森田先生は実は読み切り短編なども多く、「べしゃり暮らし」はその前身ともいうべき読み切りが「週刊少年ジャンプ」に掲載されたことがあります。

 設定などが微妙に違うのですが、正員「べしゃり暮らし」プロトタイプというところです。

 後に青年誌に掲載誌を移し、週刊連載ではなくなるのですが、この恐るべき完成度のコミック「べしゃり暮らし」が当初は「週刊少年ジャンプ」に毎週掲載されていたというのですから驚きます。

 何が言いたいかというと、森田先生は決してこの頃の「お笑いブーム」に便乗して「バックステージものをやれば売れる」と判断したわけではなく、根っからお笑いが好きで仕方ないので遂には漫画にしてしまったということなのではないか…ということです。

実際の漫才をしている(かつ作者がネタを考えている)のがすごい!

 さて、ここまで書けばこの先もある程度予想が付くと思います。

 この「べしゃり暮らし」の何が凄いかというと、「漫画の中で実際の漫才のやりとりをしている」ということなんです。

 流石に数分に渡るネタを最初から最後まで全部描く場面はありませんが、「面白いやりとり」はちゃんと誌上で再現されているのです。

 ちなみに「麻雀漫画」だと「闘牌原作(とうはいげんさく)」といって、プロに「どこで何を出して何を鳴いて、どうあがるか」を依頼する場合もあるそうです。

 実際、麻雀における若手駆け出しのプロやトーナメントの賞金以外の収入口として、ゲストやレッスンプロ以外の「アルバイト」として「麻雀漫画の闘牌原作」は確立しているそうです。

 ハリウッド映画においては脚本家が「ストーリーライター」と「ダイアローグ(会話)ライター」が別の場合があります。

 

「面白いストーリー」

「印象的な会話」

が書ける資質は別ですからね。

 アメリカでは、コメディ映画においても、作中で乱打される「面白いやりとり」「ギャグ」などは実際にコメディアンに脚本会議に入ってもらって考えてもらい、それを報酬を支払って「購入」したりしているそうです。

 いかにも分業が確立しているアメリカと言う感じです。アメコミが「鉛筆下書き」「下書き」「ペン入れ」「カラー」「リテイクを出す係」と果てしなく分業が進んでいるみたいな話です。

 なので、「お笑い芸人漫画」であるのならば、その「漫才部分」を別に考えるブレーンがいても全くおかしくありません。

 だって大昔から「原作者」と「漫画家」の分業体制なんて日本の漫画業界にすら普通にあるんですから。

 しかし、恐ろしいことに森田先生はこれら劇中で登場する漫才コンビやピン芸人などの「ネタ」を自分で書いているのです。

 それも、私みたいな浅いにわかお笑いファンですら「あるある!」と思わず叫んでしまいそうになるほど見事なモノ。

 多くの「べしゃり暮らし」読者がそうでしょうが、漫画を読んでいて「やりとり」が何度も実際の声として「聞こえてくる」瞬間がありました。

 そして「ぷっ!」と思わず吹き出してしまう瞬間なんて数知れません。

 そう、恐ろしいことに「実際にかなり面白い」のです。

 のみならず、「つまんない芸が本当につまらなく見える」展開も完全再現。

 多くの登場人物に明確にモデルが存在しますが、そんなことは全く問題になりません。

 何しろ森田先生はこの漫画を描くにあたって、実際にNSC(エヌエスシー)(New Star Creation)に入学したほど綿密な取材を行われました。

 恐らくかなり多くのお笑い芸人やその卵たちにも話を聞いていることでしょう。

芸人たちのドラマティックな生き様が魅力的

 主人公はもとより、先輩芸人や引退していく芸人たちに関する濃厚な人間ドラマなど見所も満載。

 ほぼ毎回誰かが号泣していると言ってもいいんですが、それぞれに泣く理由も背景も違うのです。

 そして読者も号泣。

カイミ
カイミ

特に6ー7巻が、号泣でした・・・

 正に「笑って泣けて」という娯楽のお手本みたいな最高の漫画の一本です。

 みんな良いのだけれど、一番お気に入りなのはコミックス13巻の「学費免除バトルの3人でやった最後の舞台」が一番好きです。

:::::::

 これはもう「面白い漫画を読みたい人なら読んでくれ!」としか言えません。

連載期間14年で完結(待ちに待った)

 とにかく連載期間が長いです。読み切りを除く、本編連載が始まったのが2005(平成17)年。最終的に現在の20巻目の内容の掲載が2019(平成31)年。

 実に14年に渡ります。

 生まれたばかりの子供が中学二年生になる期間です。

 というか、漫画ファンにとっては「かなり昔(からある)漫画」というイメージでしょうが、一段落したのは2019年とつい最近なんですね。

 ミルクボーイがM-1で優勝した年、といえばお分かりいただけるでしょうか。

カイミ
カイミ

2019年のM1は、最高の神回でしたよね♬順番も神だった。録画したのを何回も観た。

 

 この漫画「べしゃり暮らし」は非常に内容が濃く、面白い漫画であることは間違いないのですが、何しろ待てど暮らせど次の巻が出ません。

 ・・・個人的な話になりますが、正にこの時期は「激動の時代」で、仕事などの環境が激変してコミックスを購入し忘れてました。

 その為、最新刊が出ても前回までの内容をすっかり忘れていることも多く、完全に忘れ切って日常生活を送っていて気が付けば2~3冊貯まっていたりしたため、「17巻」くらいでストップし、つい最近まで読んでいませんでした。

 「サイレントメビウス」の様に、残りの巻を一気に全部買って読み通しました。

 途中で止まっている漫画ファンも多いと思うので是非この機会に!

19巻のラストと、幻の最終20巻について

第19巻のラストについて

 第19巻のラスト、明らかにM-1グランプリを思わせる大会への最終予選を勝ち残り、出場を決めた主人公たちが舞台袖で「よし行くぞ!」と歩き始めるところで終わっています。

 ここで映画の様なスタッフロールまで入り、「最終回」の雰囲気濃厚です。

 実際アマゾンなどでも、「新刊本」として手に入るのは19巻までで、20巻は「絶版・品切れ」となっていて、中古品を買うしかありません(電子版は販売中)。

 私も久しぶりに「残り全巻買おう」と調べていて、「20巻」の存在を感知して「…?何これ?」となりました。

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20巻を読んでみて

 実際、20巻を買って読んでみて。

 驚愕。

 私はてっきり、「その後お笑い芸人として活躍している主人公」の後日談か、或いは「結局は夢破れて真面目に就職しようとするも、裏方として業界に関わり続ける元お笑い芸人」でも何でもいいんですが、そういう話だと思っていました。

 ところがなんと、あの感動的な19巻のラストの正に直後からスタートします。

 そしてなんと「M-1グランプリ」そのものを1巻まるごと使って描き切るのです!

 出場するお笑い芸人たちもそれまで絡み合って来たライバルたちばかり、審査員の顔ぶれすらそれぞれのドラマを見せてくれた豪華メンバーがずらりと並んでおり、正に集大成の赴きです。

 各巻の帯のお笑い芸人さんのコメント

 各巻の帯にお笑い芸人がずらりと名を連ねていることからもお分かりの通り。

 序盤の巻は、普通のおすすめコメントなんですが、巻数が進むごとにみんなボケまくってあんまりちゃんと漫画の内容を踏まえておススメしてくれてないんですが(爆)

 芸人さんからも評価の高い傑作マンガです。

第1巻のコメント:小堀裕之(2丁拳銃)

「べしゃり暮らし」を読んでると

森田先生はお笑いが好きなんだなぁと感じます

そんな森田先生が好きです。

「べしゃり暮らし」1巻の帯コメント

第3巻のコメント:川島 明(麒麟)

高校の頃、上妻と同じように

「どこで前に出たらクラスメートの

笑いが取れるか」ばかり考えてました。

上妻と違うのは一回も前に出なかったことですが。

「べしゃり暮らし」3巻の帯コメント

第6巻のコメント:大村 明宏(トータルテンボス)

圭右と組んでいればM-1優勝できたかもしれません。

おやおや、おだやかじゃないねぇ〜。

「べしゃり暮らし」6巻の帯コメント

第7巻のコメント:富澤たけし、伊達みきお(サンドウィッチマン)

富澤たけし「『焼きそばAT』名前だけでも覚えて下さい」

伊達みきお「『きそばAT』だろ!お前が覚えろよ!」

「べしゃり暮らし」7巻の帯コメント
カイミ
カイミ

全巻に様々なお笑い芸人さんのコメントがついてます。電子書籍でも帯コメント紹介されてたら良いのに。

まとめ

漫画「べしゃり暮らし」はこんな人におすすめ

  • お笑い(特にM-1グランプリ)が好きな人
  • バックステージものが好きな人
  • 泣けて笑えて、感動したい人
  • 読みやすい漫画を探している人(普段あまり漫画を読まない人でも、スイスイ読めます)
  • とにかく面白い漫画が読みたい人
ぶらっくうっど
ぶらっくうっど

普段お笑いに興味のない人であっても、純粋に面白いので是非どうぞ!

漫画「べしゃり暮らし」はどこで読めるか

※2023年5月調べ。

紙の本

紙の本は、中古で手に入ります。

ジャンプコミックス1−3巻で出た形のものは、現在あまり手に入りにくい状況。

ヤングジャンプコミックスで出たバージョンが殆どで、この形で1巻から手に入ります。

電子書籍

楽天、Amazonなどで購入できます。

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集英社公式H Pからも各種サイトが紹介されています。

漫画アプリ

  • マンガBANG! ・・・ 毎日配布されるメダルで読むことができます(2023年6月10日まで)。各話のコメント付きで読めて、楽しいです。
  • LINEマンガ ・・・ 毎日回復する「毎日0円」で読むことができます。こちらも各話コメントがつくことがあります。
  • ジャンプ➕ ・・・ 3話まで無料で読めて、後はコイン購入になります。

WEB漫画

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ヤングジャンプ公式サイトで、第1話がお試し無料で読めます。

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お絵描き好き
漫画好き夫婦の感想ブログ「遊星からのブログX」です。お絵描き好きの妻(カイミ)と、オタク第二世代&こじらせオタクな夫(BW・ぶらっくうっど)、猫2匹と暮らしています。語りたくなる漫画・映画等のおすすめ作品と、iPad、PC便利グッズなどをご紹介していきます。
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