「寄生獣」スピンオフ漫画の世界 その2 寄生獣リバーシ
感想は、ぶらっくうっどが書いてます。よろしくお願いします。
「寄生獣リバーシ」は、こんな人に読んで欲しい
- 「寄生獣」の熱狂的なファン
- 「寄生獣」の裏側を知りたい人
- 「ネオ寄生獣」(トリビュート)シリーズでは満足できなかった人
- 「間」を活かした漫画演出が好きな人。
まだスピンオフ元のコミック「寄生獣」を読んだことない人は、下のリンクからどうぞ ⇩
「寄生獣リバーシ」概要
岩明均の『寄生獣』のスピンオフ作品。
原作と同じ時代、同じ場所で起こったもう一つの事件を描いたミステリーサスペンス。
講談社「コミックDAYS」で2018年6月から2021年5月にかけて配信された作品。
「寄生獣リバーシ」ストーリー
寄生生物が発生した西暦1990年代の日本を舞台に、友人たちを惨殺された広川樹が、復讐(ふくしゅう)を果たすべく犯人を追跡していく。
樹の父親である広川剛志や、深見十三の甥(おい)の深見拓郎、寄生生物である田村玲子や草野、後藤など、原作に登場する人物が本作にも多数登場し、樹や十三たちにかかわっていく。
感想
「寄生獣スピンオフ漫画の世界その1(リンクはこちら)」で紹介しきれなかった「寄生獣」スピンオフの最後の作品にして決定版、「寄生獣リバーシ」についてご紹介します。
「ネオ寄生獣」で非常に解像度の高い「寄生獣」スピンオフ漫画を仕上げられた「太田モアレ」さんによる全8巻。
原作を知っていれば最も印象的な人物と言っていい「広川」の「息子」が主人公というだけで「そう来るか」と思うと思います。
とにかく全編に渡って「原作のこの事件が起こった時、裏側ではこうでした」という展開なので本編を熟知している必要があります。
結局のところ、面白いの?
面白いです!
平間刑事や自衛隊の山岸なども当然登場します。
更に「三木」や「後藤」が「どういう風に形成されていったか」などの裏話など「そうだったのか!」の連続。
「ネオ寄生獣」シリーズでパロディみたいなのは十分やり尽くしたと判断した編集部の満を持した、シリアスにして決定版の一作というところでしょう。
「寄生獣」ファンなら買って損なし!…というか、寄生獣ファン以外が買うことが余り考えられませんけどね。
ただ、不満点もある
ただ…正直、若干「期待レベル」は「越えなかった」かな…という印象はあります。
「ネオ寄生獣」シリーズであれだけの再現度を見せた太田モアレさんなのですから、思い切って「人間そっくりに擬態する」寄生生物という「設定」のみを活かした完全オリジナル「寄生獣」作品でも良かった気がします。
「ネオ寄生獣」を読んでいて思ったのですが、あの設定は「寄生獣」一作で終わらせるのは余りにも惜しいと言えるほど「普遍性」があります。
「ゾンビ」ほど一般化するとは思えませんけど、間違いなく魅力的。
なんですが、「リバーシ」は余りにも本編に寄り添ってしまったがために「広がり」という点では今一つでした。皮肉なことに「ネオ」シリーズのやりたい放題の方が結果として世界が広がっているのです。
本編においてはある意味において「集大成」ともいえる「後藤」と新一が対戦し、勝利を収めることでストーリーは収束しますが、別に「後藤」は「ラスボス」ということではありません。
確かに非常に高い知能を持ち、戦闘力においても5体合体している後藤はある意味においてたった一体で人類の存亡を揺るがしかねない存在…と、言って言えなくはありません。
確かにガチで対戦したならば、人間側には相当の犠牲が出るでしょうが、最終的には物量の差で「後藤」は敗れるでしょう。
ただ、「寄生獣」全体のストーリー展開から考えると、仮に「後藤」があのまま新一を倒して生き延びたとしてもその後は他の寄生生物と同じく特に表立った行動をすることも無く社会に溶け込んでそれっきりな気がします。
最初の案として検討されていたという「山奥でひっそり」したまんまという事も考えられます。
つまり、「後藤との最終決戦」と矛盾するか、或いはそれ以上の「ラストバトル」みたいなものを仮に描いたとしても、それほど本編を邪魔するとは思えない…という事が言いたいわけです。
実際、「一年戦争」を舞台にした「ガンダム」世界では「そんなことがあったんなら大変なことになってないか?」という展開が「スピンオフ」で描かれることなど日常茶飯事です。
そこは「もっとはじけちゃっていいのに」というある意味贅沢な不満点でした。
良いなと思ったところ
「間」の演出が良かった!
太田モアレ氏の作風なのか、まるで映像作品の様にじっくりと「間」を取って見せるところがあります。
はっきり言ってこの演出は「大好物」です。ムードたっぷりで非常にいいです。
ただ、それ故に「ページ数の割には内容が薄い」ということにも繋がってしまいます。
全8巻と、本編の「全10巻」とそれほど違わないページ数を誇りながらも、情報量で言えば全く及びません。
これは「紙」ではなく「アプリ」に連載されたために、印刷コストなどを考えなくていいため贅沢にページを使えたという事かもしれません。
であるからこそ余計に「もっと思い切ってオリジナル展開」を期待したかったところです。
「表紙」が良かった!
「寄生獣」最大の魅力は「寄生獣」そのものにあります。
人間の頭部がおよそ人間の想像の限界を突破する「変形」の仕方をするのですが、この「寄生獣リバーシ」の最大の魅力の一つが「表紙」でしょう。
全8種類描かれた表紙は最終巻の広川を除けば、「寄生獣」テーマの博覧会の如くです。
ぶっちゃけ、このテーマで一流画家とか絵師とか漫画家に募集してずらりと並べたらさぞ見ごたえのあるものが出来上がるのではないか…と思ってしまうほど「イカレた」造形の「寄生獣」たちがずらりと並びます。
是非心あるキュレーターの方々には、「寄生獣コンセプトアート展」とか開いて欲しいですねえ。
古今東西の有名・実力派漫画家の皆さんの描く「オリジナル寄生獣アート」とかゾクゾクするじゃないですか。
知名度から言っても無下に断られる類の依頼ではありませんし。
個人的には画家でもあるジェームス・キャメロンの描く「オリジナル寄生獣」とか見てみたいなあ(依頼料幾らすんねん)。
まとめ!
改めて、元祖「寄生獣」の凄さを感じた!!
改めて「寄生獣」というコミックが稀代の傑作であったという思いを新たにせざるを得ません。
人類が続く限り永遠に読み継がれる傑作であることは間違い無いでしょう。
「あの寄生獣の裏側(リバーシ)を知りたい」という方なら手に取って頂いて間違いないと思います!