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映画「アリータ:バトル・エンジェル」感想 (BW)

kaimi
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監督こそしていませんが、待望のキャメロン印の最新作(公開当時)!

実写化企画の話を聞いてからかれこれ20年の作品です。もうあの話(映画化)は無くなったのかと思ってたので、待ちに待った人も多かったのではないでしょうか。

記事を書いたのは、「好きな映画監督は、ジェームズ・キャメロン」のBWです。よろしくお願いいたします。

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概要・あらすじ・キャスト

映画概要

「アリータ:バトル・エンジェル」(原題: Alita: Battle Angel)は、1991年に出版された木城ゆきとの漫画「銃夢」を原作とする、サイバーパンク・アクション映画(2019年、アメリカ)。監督は「シン・シティ」のロバート・ロドリゲス。脚本・製作は「アバター」「ターミネーター」等のを手掛ける巨匠ジェームズ・キャメロン。

あらすじ

天空に浮かぶ地球最後のユートピア都市“ザレム”と、そこから排出された廃棄物が堆積する荒廃したクズ鉄町“アイアンシティ”に世界は2分されていた。

ある日、サイバー医師のイドはクズ鉄の山から少女の頭部を発見し、新しい機械の身体を与えアリータと名付ける。アリータは記憶を失ったままイドのもとで暮らしていた。少年ヒューゴと街を散策したり、路地でスポーツ(モーターボール)をしたりと交流を重ねながら、次第に2人は惹かれあっていった。

アリータは、毎晩のようにイドが出かけていることが心配になり後を追ってみると、実はイドが犯罪者を殺して治安を守る賞金稼ぎだったことを知る。

襲ってきた敵からイドを守るために戦った際、格闘術”パンツァークンスト”と、かつて月面で戦った兵士としての記憶を思い出す・・・彼女は、300年前に創られた“最強戦士”だった。

クズ鉄町で流行するスポーツ”モーターボール”。そのオーナーであるベクターは、レースのオッズを操作するため最強のモーターボーラーを製造しようと目論んでいた。アリータが未知の技術で作られたサイボーグだと知ったベクターは、アリータのボディを手に入れようと暗躍を始める。

一方、少年ヒューゴはいつか天空に浮かぶ都市“ザレム”に行くことを夢見ており、必死にお金を貯めていた。そのことを知ったアリータは、モーターボールに参加し賞金を獲得すれば、2人で“ザレム”に行けるかもしれないと考え、参加を決意。だが、それはアリータのボディ(新たなボディのバーサーカー)を奪うため仕組まれたものだった。

大切なヒューゴの夢を叶えるため、アリータの戦いが始まる。

キャスト・スタッフ・監督

■キャスト&スタッフ(カッコ内は吹替版の声)

アリータ…ローサ・サラザール(上白石萌音)
イド  …クリストフ・ヴァルツ(森川智之)
チレン …ジェニファー・コネリー(山像かおり)
ベクター…マハーシャラ・アリ(鶴岡 聡)
ザパン …エド・スクライン(神谷浩史)
グリュシカ…ジャッキー・アール・ヘイリー(木村雅史)
ヒューゴ…キーアン・ジョンソン(島崎信長)

監督:ロバート・ロドリゲス
脚本・製作:ジェームズ・キャメロン
脚本:レータ・カログリディス
製作:ジョン・ランドー
原作:木城ゆきと

映画「アリータ:バトル・エンジェル」感想

実写化企画と聞いてからかれこれ20年、待望の映画

監督こそしていませんが、待望のキャメロン印の最新作(公開当時)。

実写化企画の話を聞いてからかれこれ20年の作品です。

 キャメロン監督がギレルモ・デル・トロから漫画を紹介されて・・・ってな経緯はどこでも読めるのでそっちで読んでください。

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 折角なんでそれ以外の話から。

 結論から言うと、とても面白い映画でした。

 縁あって「3D吹き替え、4DX」という考えうる限り最高の環境で視聴することが出来ました。

 何でこんなに面白く感じるのかを軽く分析してみます。

個人的に面白く感じたところ

その1 大きな目

 やはり目を引くのが、ガリィ・・・(原作漫画「銃夢」の主人公の名)ではなくて「アリータ」の大きな目でしょう。

 元々全身義体みたいなビジュアルなのでモーションキャプチャーからの全身CGにならざるを得ないのですが、それにしても「大きな目」には驚きました。

 というかこの時点でハッキリ不安しかありません。

 「漫画の実写化には違いないけど・・・そういうことじゃねえんだよ」と。

 何というか、「ドラゴンボール」の実写化をするにあたって高校生に改変してみたりという

「どうせマンガ映画なんて適当にやっときゃいいんだ」感といいますか。

 元々が日本の漫画なのですが、どうしても創作物には文化的なギャップがあります。

 最近の例だと、「聖闘士星矢(せいんとせいや)」のリメイク(ネットフリックスのアニメ版)でアンドロメダ瞬がいかにも女性的な挙動をしているということからなのか、女性へと設定が変更になっていました。

 細かいニュアンスの説明をしているとキリが無いのですが「何も分かっていない」としか言いようがありません。

 日本の80年代ポップカルチャーに関してハリウッド一造詣が深いと思われるギレルモ・デル・トロの「パシフィック・リム」にしてからが「謎の言語が書いてある日本の看板」とかを出してしまうほどです。

 そもそも日本は「子供」が大人顔負けの活躍をするフィクションに違和感がありません。

 対して海外、特に欧米では「子供」というのはあくまで「大人になる前の未成熟な存在」でしかなく、世界を救ったりするのは決まって「おっさん」ばかりでした。

 そこに、見た目が子供どころか「美少女」の戦闘ロボットが活躍するお話がウケるのか?という疑問があります。

 事実「風の谷のナウシカ」は「風の谷の戦士(ウォリアー)」と改題され、見るも無残に再編集されてしまったそうです。

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 仮にも劇場公開される映画に「小娘が主人公」など全く考えられなかった訳です。少なくともアメリカを始めとした海外においては。

 何しろシュワルツェネガー、スタローン、チャック・ノリスなどの「筋肉ヒーロー」が覇を競っていた時代ですからね。

 これは基本的には今も続く現象で、確かに女性が主人公のラブコメや社会派の映画も存在はしますが、どうしても最高のギャラランキングでは女性映画スターは男性映画スターの後塵を拝しがちです。

 ましてや「女性が主人公のアクション映画」など「そんな女子供が見る子供だまし映画なんぞ観られるかよ!」ということなのでしょう。

 事実「待望の実写化」であったはずのカルト人気作「攻殻機動隊」(ブラック・ウィドウことスカーレット・ヨハンソン版)の評判は散々でした。

 しかし、「アリータ」を実際に観てみると、大きな目に関して初見のスチルなどから感じた「気持ち悪い」という印象は全くありません

 それどころか、言ってみれば「心地よい違和感」があります。

 少なくとも主人公のアリータに関してのみ言えば、実際の女優さんの顔がモロに見えてしまうと「嗚呼、女優さん頑張ってるな」という印象の方が先に立ってしまいます。

 しかし、ディズニー・ピクサーのアニメ映画の様な「完全なCG」と「実際の人間の顔」の丁度中間地点の塩梅(あんばい)です。

 少なくとも「ポーラー・エクスプレス」みたいな「不気味の谷」に落ちまくっているCGでは全くありません。

 これは地味な様で大きな「発見」じゃないでしょうか。

 アリータ以外の登場人物はそうした顔の加工は全くしていないのも慧眼です。そりゃメカメカしいキャラも沢山出ますが、目の大きさバランスの話ね。

 …とはいえ、日本では興行的に大苦戦(この点後述)したことを考えると、「まだ観ていない観客」に違和感というか下手すると「生理的嫌悪感」を抱かせてしまったのは余りよろしく無かったのかもしれないですね。

その2 「違和感のなさ」に使われたCG

 私が子供の頃の映画ってのは、「見せ場」なんて2時間で5秒くらいしかなく、しかも全部それをコマーシャルで見せちゃってる様なのばかりでした。

 割とマジな話です。

 何しろ特撮ってのはお金が掛かります。

 かの「ジョーズ」みたいなハリウッド大作ですら、サメマシンがぶっ壊れてロクに動かないので後半までサメが殆(ほとん)ど出てこない構成に変えて乗り切ったくらいです。

 あの「サメの主観視点」で犠牲者に迫るカットは苦肉の策だったのです。そこにあのBGMが乗っかることで特大ヒットになったんですから偶然というのはあるものです。

 ともかく、見た目に「おおっ」というカットを作るのは本当に大変です。

 ところが不思議な物で、確かにそうではあるけどならばそういうものばかり延々と見せられると「慣れて」来ちゃったりします。

 映画「トランスフォーマー」は確かに物凄い映画です。

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 どこがどうなってんだかサッパリ分からない複雑な変形を一瞬で行うロボットが次々に出てきて、昔だったらその数秒で一年間話題が持った様な大スペクタクル場面が延々と続きます。

 本当に、延々とのんべんだらりと「見せ場」クラスの場面が15分くらい続いたりするのです。

 すると不思議なもんで「・・・もういいよ」という気分になって来てしまいます。

 元々画面で何が起こってんだかサッパリ分からないことで有名なマイケル・ベイの映画だということもありますが、要するに「単に凄いだけ」ではなくて「緩急を付けて効果的に見せる」ことが必要なのです。

 とはいえ、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は全編クライマックスみたいな映画ですが全く退屈しないので、やはり見せ方次第なのかもしれません。

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 では「アリータ」のCGはどうか?

 恐らくあの作り込みの感じだと、画面に映るあらゆる場面でCGが使われているでしょう。背後に浮かぶ巨大空中都市とか。

 80年代くらいの映画だと、恐らくセットの後ろを真っ黒か真っ青にして手で描いたイラストを合成したりして「それっぽく見せる」のが精いっぱいだったと思います。

 だから一見すると凄そうに見えるんだけど、張り付いたように動かないとか。

 ところが「アリータ」くらいになると、延々と見事な異世界が展開しています。

 CGというのは特に「重さ」を表現するのが非常に難しく、ともすれば非常に安っぽくなってしまいます。

 実際一部の「サメ映画」なんかのCGのショボさは想像を絶するものがあります。

 対して「アリータ」では一部の機械人間の連中は身体がメカのスケルトン状になっていて、それこそパーツの隙間から背景が透けて見えています。

 そしてそこに違和感が無い

 そう、CGだの特撮だのというのは、「自然に見せる」のも役割の一つだったはずなのです。

 「頭が2つある」人間みたいな「ありえないもの」を見せる使い方と、「老けメイク」みたいに「自然に見せる」使い方がある訳です。

 映画「ダイ・ハード」は80年代の傑作アクションですが、実はかなりの程度特撮が使われています。

 そして、余りにも自然であるが故に逆に「凄さ」が分かりにくく、特技関係の賞を殆(ほとん)ど獲れないという皮肉なことになりました。

 俗にいう「ファインプレー」は実は余り上手くないという言い方があります。

 野球の「ファイン(素晴らしい)プレー」といえば、横っ飛びでボールに飛び付いたり、キャッチと同時に転がったりといったアクロバティックなプレーを想像します。

 ところが本当に上手い選手は予(あらかじ)めボールが来そうな位置に移動を済ませていて、真正面から落ち着いてキャッチして処理してしまうというんですね。

 この方が無理が無い訳です。ところが「当たり前」に見えてしまう。

 横っ飛びで飛び付かなくてはならないというのは、そもそもギリギリでしか間に合っていないということになり、事実を言ってしまうと「たまたま上手く行った下手なプレイ」なのですが、見た目が派手なのでこちらが評価されてしまいがちです。

 実際、「特撮を売りにした」映画には俗悪でこれ見よがしなB級映画も少なくなく、その「見せ場の場面」もいかにもその為に準備したみたいなものがありました。

 人のバラバラ死体だの臓物だのを売り物にする、ホラー・スプラッター・スラッシャー映画などはその典型でしょう。

 「俗悪B級映画」で名前を上げるのは申し訳ないと思う反面、「上等だよ!」と監督本人も言いそうなので敢えて上げますが、シュワルツェネガー主演・ポール・バーホーベン監督の「トータル・リコール」なんかがそうでした。

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 この映画で一番有名なのは、おばさんの顔が割れてシュワルツェネガーの顔が出て来るショットでしょう。CMにも散々使われてこの夏はこればっかりでした。

 ところが実際に映画を観てみるとこの場面、シュワがおばさんに変装して入国管理を突破する場面なんですね。こんな凝ったギミックを準備する『必然性も意味も全く無い』し、顔が割れてシュワが出て来る意味も分からない。

 この後正体がバレてそこいら中が大爆発したりする大立ち回りを演じることになるんですが、その間ずっとシュワはおばちゃんルックのスカート姿というおマヌケぶり。

 まあ、「特撮の凄さを見せつけんがため」の場面としか言いようがありません。

 ちなみにこの年のアカデミー賞は「トータル・リコール」が余りにも突出したSF大作であってライバルがいないということで、授賞式の前に既に「特技賞」受賞が発表されているという異例の扱いになっていました。

 「ストーリーはアレだけど、とにかく特撮は凄い」と誰もが認めていたということでしょう。

 確かに言われてみれば「アリータ」には「マトリックス」の「バレット・タイム」みたいな「象徴的」な特撮場面はありません。

 少なくとも誰しも意味なく「えびぞり」の真似をしてしまうほど流行したりはしていません。

 しょっちゅうスローモーションになって印象的なバトルアクションを披露はするのですが。

 要するに、「このお膳立てならば当然これくらいの自然なCGは必要」という必要を満たすに足るCGが実現しているということであって、ある意味理想的なCGの使われ方だと思う訳です。

 それでいて「生理的感覚に訴える演出」もしっかりあります。

 劇中、ヒューゴが「お気に入りの場所」として高い建物の屋上にアリータを案内します。

 あらゆる映っているものがCGの場面でしょう。

 ところがちゃんと上から下を見下ろして、余りの高さに見ている側が「ひゅっ」とするショットがちゃんとある訳です。

 こういうところなんですよ。「トランスフォーマー」とか「ハン・ソロ」とかに無いのは(爆)。

 実際に高いところでロケしたんなら当然こう言うショットは撮るでしょうが、CGとなると「わざわざ作る」必要があります。

 つまり、演出側が「こう言う絵も必要」とちゃんと分かっていたということです。

 要は「緩急を付けた、見せ方が上手い」ということ。こういう人たちが鬼の様なCGを使ってるんだから正に「鬼に金棒」でしょう。

 一瞬たりとも画面上で「ショボイ」と思われるカットが無い。ピクサーの映画なんかだと10年も前から普通に実現出来ていることではあるんですが、改めて見せつけられるとやっぱり感動します。

 ロジャー・コーマン映画の「貧乏だけど工夫してそれっぽく見える」技術というかアイデアはそりゃ凄いとは思いますが、やっぱり画面のゴージャスさって重要だと思いません?

その3 観客の感情のコントロールが上手い

 ゴミ捨て場で拾われたロボット少女と、老医師の心温まるハートウォーミングストーリー・・・と言う風に始まります。

 これは、舞台こそ未来ではありますが、ストーリーとしてはむしろオーソドックスです。

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 それこそ、舞台を現代か或いは20世紀初頭とかに置き換えて「感動の名作」とかが作れそうです。ロボットでなくて普通に拾ってきた子にすればいいんです。

 周囲にCG技術を駆使した機械人間なんかがウロついてはいますが、少女と老人の心の触れ合いを描いていると考えればいいわけです。

 そして、その老医師に「夜な夜な女性を襲っている」疑惑が浮上し、にわかにミステリアスかつサスペンスフルな展開になってきます。

 いざ悪漢に囲まれて大ピンチ!

 ところがここで「唐突」に大アクション格闘シーンが始まります。

 観客は「え!?」という驚きと共に呆然として眺めるしかありません。

 「映画秘宝」が誇る名編集者・ギンティ小林氏の世紀の名コピー「ナメてた相手が実は殺人マシンでした」展開です。

 2時間半とかなり長い映画なのに、興味が全く途切れないのはこうした緩急の付け方、観客の感情のコントロールが物凄く上手いことが挙げられます。

 また昔の映画の話になってしまいますが、実は「ノンストップアクション映画」というのは案外新しい概念です。

 何度でも言いますが昔の映画は「見せ場」のアクションシーンを見るため1時間半はガマンする娯楽でした。

 ごく普通に会話してるシーンに比べれば「アクションシーン」は数十倍のお金と手間と時間が掛かると思って間違いありません。

 派手に車やらセットなどをぶち壊すシーンともなれば失敗すれば大損害です。いきおい慎重にもなります。

 現実問題、そんなシーンばかり作っていたら映画なんてとても完成しない訳です。

 映画界が効率が良くなってきたのか、それこそ延々と派手なアクションシーンばかり続く映画も当たり前になってきて、果ては「24-Twenty Four-」みたいにテレビドラマでそれが実現してしまったりします。

 映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」はマジな話、停滞する時間の方が少ないくらいのノンストップアクション映画です。

 これに比べれば「マッドマックス2」は確かに30分に渡って続くラストのチェイスシーンは物凄いものの密度と長さでは全く及びません。

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 しかし、この決して「格調」の高くない低予算映画は全世界を熱狂させて爆発的な売り上げを記録しました。

 それに対して、「怒りのデス・ロード」は芸術映画並みの興行収入しか上げられませんでした。

 同じ2015年公開の映画・実写版「進撃の巨人」の1/10以下です。

 どうしてこうなったかといえば、「マッドマックス」「2」が当時の映画界で「オーパーツ」だったからでしょう。その時代にありえないほど突出した存在だったということです。

 つまり、数秒か数分もあれば上出来のアクションシーンが30分も続くというのは当時にしてみれば正に衝撃的だったわけです。

 しかし、現在は2時間アクションが続いてもそれほどは衝撃ではない訳です。

 私は映画館で「スター・ウォーズ エピソードII クローンの攻撃」を見た時、冒頭の延々長回しでの宇宙の空戦アクションに圧倒されました。

 ところが、あんなに凄いのに、映画ファンどころかスター・ウォーズファンでも特に印象的なシーンという訳ではないでしょう。

 要は「幾ら凄いシーンでもただやればいいってもんじゃない」時代になっちゃったんです。

 となると、なら「アリータ」はどの辺が凄いのか?という話になります。

映画の見せ場「ボールを取り合う競技」が良かった

 この映画の見せ場はやはり、コースをぐるぐる周回しながらボールを取り合う競技「モーターボール」でしょう。

 正直、ルールがどういうことになってるのかイマイチよく分からないのですが、ほぼ致命傷になるような対戦相手への攻撃は許されている模様。

 CMでもガンガン流れているのでネタバレにはならないと思うので書きますが、アリータはこれに出場することになります。

 そしてお膳立てされたとあるレース。

 なんと、一緒に出場する選手は「全員」が競技そっちのけでアリータを破壊することだけを目的に集められた極悪人集団!

 恐らくこんなところを指摘するのは世界で私だけなんじゃないかと思うのですが、これは実に上手いやり方。

 大前提として、このレースがド迫力です。スピードもキレも派手なアクション、ぶつかり合い。

 4DXの恩恵を最大限に受けました。風がびゅんびゅん顔に当たり、椅子がガクガク揺れまくる!・・・とはいえ、恐らくこうしたエフェクトが一切無くても大迫力だったことでしょう。

 一人だけ別格の強さを持つアリータが、結局は全員をなぎ倒してしまいます。

良かったポイント

その1 競技に参加する必然性が無理なく演出されていること

 「そんなの当たり前じゃねえか」という声が聞こえて来そうですが、そうでもないのです。

 これは、良くない例を挙げる方が分かりやすいかもしれないです。例えば、「スター・ウォーズ エピソードI ファントム・メナス」の「ポッドレース」は何の必然性も無いどころか不自然そのものでした。

 恐らくオビワンが「スター・ウォーズ」でルークに対して彼の父親との思い出を聞かれて「彼と初めて会った時は優秀なパイロットだった」というセリフと矛盾しないために強引にねじ込まれた設定と展開です。

 どう考えても死人が出まくっている危険なレースに里親がさしたる反対もせずに出場させているのも不自然です。レースに出るのが大人ならまだしも、小さな子供ですよ。

 かなり大事なことも「字幕」で済ませてしまう「スター・ウォーズ」なのに、全部削除してセリフで説明しても全く問題の無い「ポッドレース」シークエンスは本当に必要だったのでしょうか?

 確かにスピードも迫力もあったけど、これを「見せ場」にして観客が熱狂する訳がありません。必然性が無いから「行けー!」と主人公を応援する気持にならないのです。

 その後「ポッドレース」のドライブゲームがアーケードで発売されるに至っては・・・ということですね。はい。

(最近のゲームはCGデータの宝庫なので、それを流用してコンピュータゲームを作る例は少なくありません)

 ちなみにこの「ポッドレース」の場面は完成した映画ではあの長さですが、実際はもっともっと長い予定だったそうで、ちょっと観客との感覚のズレがあるような気がします。

その2 対戦相手をブチのめすのに心理的ハードルが無い

 CMを観ていて思った違和感は、恐らく何らかの競技なんだろうけど、これほど遠慮なく対戦相手をスクラップにしていいんだろうか?・・・ということでした。

 「大きいのと小さいのが戦えば、間違いなく小さいのが勝つ」というクリシェ(ありがち展開)に関してはいいとしてもです。

 ところがいざ始まってみると

「そもそも全員が自分に敵意を持っている」

し、何と言っても

「全員が極悪人」

というお膳立てまで揃っています。

 つまり「安心してブチのめしていい」訳です。

 何度も例に挙げて恐縮ですが、「SWエピソードI」のポッドレースでは明らかにクラッシュして死亡してるであろう参加者が気の毒でなりませんでした。アナキン(主人公)の責任ではないにしてもです。

 たかが映画ではありますが、こういう心理のハードルをしっかり計算の上乗り越えているのは決して「偶然」ではないと思うのです。

 最後になります。

 私はこの頃の映画で「ジェンダーロール」を過剰に気にする傾向は余りいいこととは思いません。

 確かに「スクリーム(絶叫)クイーン」などといって、ひたすらキャーキャー言ってるだけのホラー映画のヒロインとか、「主人公の添え物」でしかない女性の登場人物とかは、女性にとってみれば不快かもしれません。

 しかし、「守られる存在」とか「男性の恋愛対象」であることを過剰に忌避ばかりするのが健全とは思えないんですよ。

 主役の女性が恋をする展開を描いたらそれは全部「女性差別」なんですか?そんなバカな!

 自立した女性として、遂に男性の存在をほぼ意識すらしないヒロインが登場するあたりはまあ、いいとしても子供向けの映画でゲイやレズビアンを称揚するべきか否かなんて話になると「それはちょっと違うのでは?」と思います。

 「アリータ」という映画は原作があるにしてもそうした時代の影響を大きく受けていると思います。

 まず、主人公側の「男」たちは揃いも揃ってごく普通の人間ばかり。要は戦闘力は全く当てになりません。イドはあの特殊ハンマー(?)で頑張ってるけどね。

 ということはつまり、アリータは周囲の「男たち」を守ってやる役回りも果たさなくてはなりません。

 悪漢に追われて「助けてくれ」とヒロインに泣きつく男・・・というのは80年代だったら「実験映画」のカテゴリでしょう。

 ましてやその後ヒロインに「お姫様抱っこ」されて、男が「守ってもらう」というのは「時代だなあ」と思わずにはいられませんでした。

 女性の自立とか女性の社会的地位の向上というのは、まんま「役割を逆転」するという意味ではないと思うのですが・・・。まあ、これは深読みが過ぎるかもしれません。

カイミ
カイミ

私は、この映画はキャメロン監督だからこの内容になったと思います。映画「ターミネーター」でも、女性が男性を引きずって助けたりしてたもの。強い女性が好きなんでしょうね。

 とはいえ、実は我が国においては「女の子主人公」なんてごく当たり前の存在です。

 そりゃ深夜アニメには「デカい剣を担いで世界を救っちゃう女子高生」なんてのも出て来るんですが、そうじゃなくて天下の「ジブリアニメ」からしてヒロインばかりです。

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 そういう意味では日本の方が「進んで」いるのかもしれませんね。

まとめ

 確かに20年も寝かされていた企画ではありますが、CG技術の発達と、そして「最先端のCG技術を使いこなせる予算と、センスを持った製作者」に巡り会う幸運な作品になったと思います。

 だって今だって、最先端技術はある時代だけど、貧乏製作者の作る「サメ映画」みたいなスーパーショボクてダサいCG映画だってある訳ですからね(爆)。

 そこに持って来て「美少女が主人公」という日本マンガのシチュエーションに世界的な潮流が追い風となりました。

 事実、海外では爆発的なヒットになっているそうです(ちなみにこういうのは「その週の売上げ」くらいを大袈裟に言っている例も多いので…残念ながらそのたぐいだったんでしょう)。

 正真正銘日本のマンガが原作で、それをあのジェームス・キャメロンが惚れ込んでプロデュースしているんですから朝から晩まで猫も杓子も「アリータ」言ってる状態になってもおかしくないのに、本国である日本では「知る人ぞ知る」存在にしかなってないのは残念です。

 これは、アニメ映画「ベイマックス(原題:Big Hero 6)」の再現(この原作はアメリカのマーベル・コミックだけど、日本をイメージしたような街で物語が繰り広げられる。なぜ話題にならなかったのか)です。何かの陰謀じゃないかと勘繰りたくなるくらいに(^^;;。

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 「日本のアニメ・マンガを世界で一番嫌いなのは日本人」という仮説と、「日本人は本質的にフィクションを捉えることが出来ない民族では?」という仮説が強固になったりもしましたが、それはまた別項を立てましょう。

「アリータ:バトル・エンジェル」はどこで観れるか

VOD

サブスク料金のみで見れるものと、サブスク+課金で見れるものとあルようです。

・U-NEXT

・TSUTAYA DISCAS

・dアニメストア

・Amazon Prime Video

スーパー!ドラマTVサイトでも情報が更新されています。

レンタル店

・DVD、BRが全国のTSUTAYAなどレンタル店で借りることができます。

・楽天やYahooでDVD、BRが購入できます。

カイミ
カイミ

DVD、BRソフトの良いところは、制作秘話などの「特典映像」があることです(一部VODでも見れるところもあるようですが)。

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 とりあえず超オススメ。観てない人は是非!

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お絵描き好き
漫画好き夫婦の感想ブログ「遊星からのブログX」です。お絵描き好きの妻(カイミ)と、オタク第二世代&こじらせオタクな夫(BW・ぶらっくうっど)、猫2匹と暮らしています。語りたくなる漫画・映画等のおすすめ作品と、iPad、PC便利グッズなどをご紹介していきます。
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