鳥山明先生の漫画「SAND LAND」完全版・全１巻の感想。当時のコミックとの違い
記事は、「鳥山明先生の漫画で育った」カイミが書いてます、よろしくお願いします。
小学生の頃に読んでた鳥山先生の漫画「Dr.スランプ」は、読みすぎて保管不可能なくらいボロボロになった思い出が。
漫画「SAND LAND」はこんな人におすすめ
- ミリタリー（戦車）が好きな人！
- 王道の少年漫画が読みたい人！
- 鳥山明の絵が好きな人！
- 鳥山明のアクション漫画が好きな人！
- 鳥山明のメカ表現が特に好きな人！
「Dr.スランプ」の表紙や、劇中のポップなメカ表現が大好きだった人は、特におすすめ！
漫画「SAND LAND」あらすじ・概要・映画化など
概要
鳥山明先生が、漫画「DRAGON BALL（ドラゴンボール）」終了後に、老人と戦車を描きたくて短期集中連載を始めた作品。週刊少年ジャンプで、2000年23号から同年合併号まで連載された。
当初からストーリーの終わり方まで考えて作られた作品で、コミックスは2000年11月7日に出版され全1巻。
2023年8月9日に、愛蔵版コミックス「SAND LAND完全版」が出版された。
あらすじ
人類の愚かな行動と天変地異が重なり、地上のほとんどが砂漠と化した世界。
なお人々は争いを続け、たった１本の川の流れが止まった。
魔物も人間も慢性の水不足に喘ぐ砂漠化した世界で、全ての水はうさんくさい国王がコントロールし、私腹を肥やしていた。
国王と国王軍はたよりにならないと考えた元・軍人の老人シバは、魔物の住む地域を独断で訪ね、「幻の泉」探しの協力を、悪魔の王子ベルゼブブに頼んだ。
最初は乗り気でなかったベルゼブブだったが、戦乱で失われたゲーム機をもらい、父サタンの許しを得て協力することとなる。
悪魔の王子ベルゼブブと元・天才軍人シバがタッグを組み「幻の泉」を求め旅立つ。
映画化、ゲーム化（2023年8月13日現在）
2023年8月18日に映画が公開予定。
迫力ある戦車の戦闘シーンが描かれるのではないでしょうか？
8月18日(金)公開『SAND LAND』
— 映画『SAND LAND(サンドランド)』公式 8/18 公開 (@sandland_pj_jp) April 2, 2023
キャラクターボイス入り最新映像が初解禁！
原作・鳥山明が描く超個性的なキャラクターに命を吹き込む実力派声優陣はこちら!!
ベルゼブブ：#田村睦心
ラオ：#山路和弘
シーフ：#チョー
アレ将軍：#鶴岡聡
ゼウ大将軍：#飛田展男#SANDLAND #サンドランド pic.twitter.com/4LQ87r3RIG
PS4、XBOXでゲーム化もされるが、発売時期は未定です。
「SAND LAND」ゲーム公式サイト・・・PS4,XBOX
通常版と愛蔵版の違い
サイズは、愛蔵版の方がひとまわり大きいです。
通常版
通常の単行本は、カバーの内側（袖）に作者のコメントとイラストの自画像があります。通常のジャンプコミックスの形式で、表紙以外は全ページ白黒。
紙の本で買う場合、このサイズ感は、軽くて持ち運びやすくて、読みやすいです。
↓リンクは電子版なので、気をつけてください。
愛蔵版
愛蔵版は、サイズも大きく、本文の紙もしっかりとしていて変色しにくそうな上質なものでした。まさに「愛蔵版・保存版」といった感じのつくり。上質でとても良いですが、収納という点では、漫画用の棚には入らない場合もありそう（高さが21センチあります・・・DVDの棚でも、ゆとりのある高さの棚でないと、入らないです）。表紙の色が綺麗なので、『見せる収納』で飾っても良いかも。
漫画本文では、連載開始当時のカラー原稿（デジタル）が見れます。ドラゴンボールまではアナログの彩色方法（カラーインクなど）で描かれていましたが、連載終了後にフォトショップ等のデジタルを導入したそうです。
個人的に良かったのは、巻末にある「鳥山明先生に聞く、『SAND LAND』制作秘話」と、「幻の未掲載ページ＆連載前に描かれたラフスケッチ」ですね。2000年の連載当時に何を思い制作されていたのか・・・が知れて、とても興味深く面白かったです！
「SAND LAND」感想
「DRAGON BALL」以降の、あまり知られてなかった名作
「DRAGON BALL」連載終了以降のこと
「DRAGON BALL」連載終了以降に、作者がおまけ漫画が何かで、漫画の連載が終わってすごく喜んでいたのを読んだことがあって。
「DRAGON BALL」連載当時の週刊少年ジャンプは、休みなく毎週漫画が読めてました。当時の子供としては良かったのですが、制作者側からすると相当に苛烈な職場環境だったと思います。
アニメも休みなく放送するので、漫画に追いついてしまい、「かめはめ波」を悟空が放つだけ・・・で引き延ばし、30分終わった回もあったような（ありましたよね？？）。子供ながらに「漫画に追いついちゃんたんだな・・・」と察して、あえてツッコミはしませんでした。
令和の現在なら、「今からでも追いつける！特集」などはさみつつ、漫画に追いつかないように１年に１クール制作のみ・・・と計画的に制作するのでしょうね。
現在は、作家や制作現場を昭和時代ほど蔑ろにしないので、以前より改善されて良かったなぁと思います。
「DRAGON BALL」連載終了以降は、私があまり漫画全般を読まない時期で、鳥山先生の漫画は「COWA！（こわ）」位しか読んでなくて。かわいい絵本タッチで描かれる悪魔の話で、面白い。これもおすすめです。
この名作漫画をもっと早くに知りたかった！
2000年に発表された漫画「SAND LAND」を知ったのは映画化になるらしい・・・と聞いた、2023年になったつい最近のこと。
漫画のあらすじを読んだとき、私の好きな映画「MAD MAX」シリーズのことを思い出しました！
「MAD MAX」１、２、３も好きですが、特に４作品目となる「マッドマックス怒りのデス・ロード（2015年公開）」が特に好きです。
「マッドマックス怒りのデス・ロード」のあらすじ
石油や水などの資源が尽きかけ、荒廃した世界。かつて愛する家族を守れなかったことを悔いる元警官マックスは、そのトラウマに苛まれる中、独裁者ジョーに反旗を翻した女戦士フュリオサの一団と出会う。そして彼は、壮絶な逃走劇に巻き込まれていく。
タッグを組んだ仲間と、大きな乗り物で砂漠を爆走するシンプルなストーリー、奇妙な格好をした敵が襲ってきて・・・ちょっと、似ていませんか？「私の好みに合いそうだなー」と、漫画「SAND LAND」に興味を持ちました。
漫画を読んだ結果・・・お気に入りがまたひとつ、増えました！
作者が「描きたいもの」を描いているのが伝わってくる
悪魔と老人のコンビが戦車で砂漠を駆け抜ける・・・と、「作者の描きたいものだけで構成された」この内容だけ聞いたら「少年漫画の内容にしては渋いなー」と思われるかもしれませんが、そこは王道少年漫画とコメディを描いてきた鳥山先生で、主人公のキャラクターは少年漫画らしいとても魅力的なキャラクターだなと思いました！
私は漫画を読んでいて「描きたいものを描いている」「ここが伝えたいと思って描いている」絵って、とても訴えてくるものがあって良いなー！と感じ、こちらも楽しくなってきます。
主人公：悪魔の王子ベルゼブブ
鳥山先生は、悪魔や動物など「人外のデザイン」が特に魅力的だと思っています。
悪魔の主人公、ベルゼブブは、ナン千年（悪魔は子供で2500歳くらい？だそうです）も生きている悪魔の王子。
盗みなどの悪いことはするけれど、人は殺さない・・・という一貫した考え方は、少年漫画の主人公としても良くて。
盗んだ水を人間の子供に分けてあげたり（『成長したらいじめてやるんだよ！』と悪態をつきつつ）・・・とツンデレだったり、ゲームに夢中になる子供らしいところもあったりして可愛い。
可愛いだけでなく、小さな体だけど、とても強い！というのもギャップがあって、とても魅力的なキャラクターだと思いました！
悪魔の王子のお供：シーフ
お供に選んだのは、格闘は苦手だけど、物知りで盗みの得意な老人の悪魔・シーフを連れていくのも良かったです。
シーフは、王子ベルゼブブにぽそっと話す小さな小言みたいなセリフでクスッと笑わせてくれて楽しいキャラクターです。戦闘要員にはならないけれど道中で結構活躍します。
元軍人の老人：ラオ
元軍人の老人ラオ。作者のミリタリー趣味が炸裂していて、とても良いキャラですよね！
登場人物は若者だけでなく、「渋い老人」が登場すると、物語が重厚になってより面白くなると思います。見た目はラオの方がお爺さんですが、生きた年月だけだと、ベルゼブブ達の方が長いのも面白いところ。
ラオは戦車戦も良いですが、序盤のトンファーを使った格闘シーンが好きです。
ポップな戦車が魅力的！
ペンギンのような丸っこい形の戦車は、可愛いのに、描写が細かくて「そこに在る」重量感が半端ないです！
鳥山先生ひとりで全て描いたそうで、キャタピラ等の細かな描写がすごい。
愛蔵版コミックの大きな紙面で見た方が、細かいところまでよく見えました。
愛蔵版コミックの巻末インタビューに書かれていた戦車のデザインについて、作者は戦車についてこう語っていました。
本来、戦車は目立たないように、また攻撃を受けにくいように車高を低くするものです。しかし大きな戦闘が無くなってからは、威圧感を重視して車高をあげ、世間に対し存在をアピールする方向になっていったのです。また、両側に大きなハッチを配するなど、防御力も軽視されているようです。
「愛蔵版コミックス SAND LAND 完全版」より
ミリタリーに明るくない私にもわかりやすい説明、ありがとうございます！
戦車に関しての知識があるから、ポップにデフォルメされているのにリアリティと説得力があるのかな、と思いました。
コミカルで魅力的な悪役たち
序盤で登場する名前の無い悪党一味は、まるで「MAD MAX２」のヒューマンガスのような衣装だったり、ちょっとやりすぎなデザインが面白いです。
生命維持装置のようなものに乗って、空中移動しているゼウ大将軍（フリーザ様の乗っていたような）。
海パンにマント姿の悪党親子、スイマーズとの戦闘はコミカルで笑えます（スイマーズの息子がちょっとだけウォーボーイズに目元や体型が似ていてなお笑った（この漫画の方が「MAD MAX怒りのデス・ロード」より早いので、偶然だけど！））。
やりすぎデザインがコミカルにも見えてきて、楽しく漫画を読み進めることができます。
まとめ：王道の少年漫画！！
現在の少年ジャンプは、購読者の年齢層も広がり、どこまでが子供向け（小学生）なのか、わかりにくいと感じる時もあります。
この「SAND LAND」は2000年に発表されたこともあり、王道の少年漫画で、格闘シーンはありますが、それほど残酷描写も無いので、安心して小さな子にも進められる良質な漫画だと思いました！
「SAND LAND」が読めるサイト（2023年8月現在）
ジャンプ＋・・・2023年9月14日まで、順次無料公開予定。
ゼブラック・・・2023年9月24日まで無料チケット配信。
